このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64(2002年8/15〜2004年11/18)に音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
アフリカ大陸南岸にセンサーをつけた多数のブイを浮かべてデータ収集しているディアドリ・バーン教授が海洋科学会議で海洋の情報収集の発表をしているという紹介記事(具体的な内容には触れられていません)の中に海の降水量の測定(推定)に雨が海面にあたる音を利用する方法なども触れられていました。
音響的な手法による降水量推定は、以前から行われていたような気がしますが、広大な海洋レベルでの学術調査などで音響解析技術が利用されていることは、一般の認知度は高くないかもしれません。
▼海のデータ収集に知恵を絞る海洋学者たち
Hot Wired Japan 2004年2月1日
http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20040204307.html
水中の音響については映画などでおなじみの潜水艦のソナーやイルカの超音波探索能力などが一般的に良く知られています。
ソナーのような海洋での音響技術は、タイタニック号が氷山と衝突する大事故を起こしたことをきっかけにして開発が開始され、10年以上後に実現、以後、主に軍事利用するために進歩しました。
第二次世界大戦での潜水艦(Uボート)対ソナーは映画などでも有名で、対Uボートのために発明されたかのような説明を見かけることもありますが、もっと前から研究されていたようです。
その後も、対ソ潜水艦対策としてソナー技術は研究され進歩しています。
音は、空気中よりも水中の方が速度が早く、また、遠くまで伝わります。
高音より低音の方が長距離での拡散などによる減衰量が少なく、長距離での音響探索に適していることから、近年クジラ等海洋生物の保護問題になっている米軍の低周波ソナー(LFAS : Low Frequency Active Sonner)が開発されています。
漁船で利用されている魚群探知機も、ソナーですが、一般艦船で利用されているソナーは、超音波帯域(20KHz以上)や高音域のようです。
魚群探知機で低周波レーダーなどと呼称されているものは、米軍の低周波(10〜300Hzあたりの帯域)とは異なり、超音波帯域中の低い周波数と高い周波数の違いを指しているものです。
▼フルノ漁撈航海電子機器をフル装備<船体一括船>!
志摩町「第27源吉丸」竣工。 149トン型・FRPかつお一本釣漁船!
古野電気株式会社
http://www.furuno.co.jp/news/news71.html
このページを見ると、高周波(81KHz)、低周波(24KHz)と紹介されており、超音波帯域が利用されていることが判ります。
ソナーは、大きく分けてアクティブ型とパッシブ型に分けることができます。 パッシブ型は集音した音を解析して探索し、アクティブ型は信号を放射して反射音を解析して探索する方式です。 魚群探知機は、アクティブ型のソナー(レーダー)です。
スクリュー音やエンジン音(モーター音)などを船舶や潜水艦が発している場合には、パッシブ型で解析できますが、対象が静かな場合には集音しても解析できません(潜水停止している潜水艦など)。
対して、アクティブ型は信号を放射して反射音によって測定するため、対象が音を発していなくても音を反射する場合には測定することができます。 電波の反射を利用する航空レーダーと似た仕組みです。 アクティブ型は、信号を発して、相手にも自分の位置を教えることになるため軍事艦船では利用方法が限られます。
米軍の低周波ソナーの技術は、低周波が海中では長距離に伝播することに注目して広範囲の探索に利用できる技術として研究されたもので、現在のLFASは、200〜180dBの大出力を放射し遠方の対象物に100dB以上の大音響での反射音を利用します。
当然、艦船搭載するような目的には適していないのですが、長距離で利用できるため沿岸から海洋を探索することも可能です。
クジラなどに対する影響が問題となったのは、100dBを超えるような大音量をクジラが利用している音の帯域で利用することで、生態にダメージを与えるという点です(クジラはイルカと異なり低音を利用しているそうです。クジラの唄というのがクジラの利用している音声帯域ですね)。
他の海洋生物にも影響があるかも知れないとされています。
▼米海軍の低周波ソナーをめぐる訴訟、最終段階へ
Hot Wired Japan 2003年6月30日
http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20030702306.html
この低周波ソナー(LFAS)が、昨年10月(2004年3月掲載時)ニュースになっていた沖縄をはじめ、日本近海で米軍が利用することにしている問題のソナーです。
110dB以上とも140dBとも言われている大音量を近海の生物にぶつけることになりますし、米国沿岸では禁止した技術ですので海洋研究や生物保護団体の方などが東アジアでの利用に反対しています。
▼SURTASS LFA (低周波ソナー)
(クジラや亀とフレンドリーイメージの写真が……)
http://www.surtass-lfa-eis.com/
この低周波ソナーの技術自体の応用は、軍事も利用だけではなく近年の海洋学術調査などに多大な貢献をしているのですが……
つづきは次回に、それでは、次回もよろしくお付き合いください。
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「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64に 音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
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