適応制御は適応フィルタを用いた制御技術です。 適応フィルタは、フィルタの出力を目標とする信号に近づけていくようにフィルタ係数を自己調整する機能を持ったデジタルフィルタです。
適応フィルタは、入力信号をフィルタリングした結果(予測信号)と目標信号との差分(誤差信号)が小さくなるようにフィルタ係数を自己調整します。
適応制御は使用環境に追従して動的に音場を制御することが可能となりますので、 音で音をキャンセルするアクティブノイズキャンセルや携帯電話のエコーキャンセル、音場再生などに応用することができます。 適応制御は音場の測定と制御を同時に行うことができる手法と言っても良いかもしれません。
アクティブノイズキャンセル(ANC)はキャンセルしたい音を適応フィルタで予測し、その逆位相の音をスピーカ等で再生して、 音で音をキャンセルする技術です。
空調ダクトの騒音や自動車の車室内騒音の低減に応用されています。これまでアナログ処理が一般的であった ノイズキャンセルヘッドホンにもデジタル処理で周囲雑音を低減するタイプが登場しています。
ANC技術は目的音声を明瞭に収音するためにマイクロホン技術にも応用されています。 複数のマイクロホン・ユニットの出力信号を信号処理することで指向性を制御して周囲雑音を低減し、 送話音声を明瞭化することが可能となります。
エコーキャンセルは携帯電話で発生するスピーカからマイクへ回り込む音響エコー成分を適応フィルタで予測し、 マイク入力信号から差し引くことでエコーをキャンセルする技術です。
音響エコー成分は、スピーカからマイクに至るインパルス応答を適応フィルタで推定し、受話信号と畳み込むことで合成します。
推定時に送話信号がある(ダブルトーク状態)とインパルス応答の推定に誤りを生じ、キャンセル性能が低下するため、 ダブルトーク時は適応動作を停止させたり、適応スピードを落とす等の方法がとられます。
携帯電話は使用する人、場所等の使用環境が変わりますので、適応フィルタを用いることで利用環境に応じたエコーキャンセルを 動的に行うことができます。
ハウリングを抑制する技術で実用化されているものの多くは、成長するハウリング周波数のレベルをノッチフィルタで 抑圧することで行っています。
この方法はハウリングを検出してからハウリング周波数のレベルを下げるので抑制するのに 時間が掛かる可能性があります。さらに複数のノッチフィルタが伝送系に挿入されるので音質が変化する場合があります。
適応制御を用いてハウリングを発生させない手法が望まれていますが、ハウリング抑制では、インパルス応答の推定に 必要なスピーカからマイクに到達する信号が存在する時に、話者の音声が常にマイクに入力されています。 これは、エコーキャンセルのダブルトークと同じ状態で、インパルス応答の推定を行う必要があります。
ダブルトークの問題を克服して高速に精度良くインパルス応答の推定を行えば、ハウリング抑制性能を改善出来る可能性があります。
音場解析・シミュレーション音場解析は、音場のインパルス応答測定による解析、コンピュータによる音場シミュレーションによる解析等の手法を用います。 |
バイノーラル録音・再生技術コンサートホールや劇場などの音場、音響空間を別の再生場所で再現する手法にバイノーラル録音・再生技術があります。 |
立体音響技術(音像定位技術)モノラル信号をデジタル信号処理によってバイノーラル化、三次元音響空間を作り出す技術です。 |
適応制御、適応フィルタの応用適応フィルタは、フィルタの出力を目標とする信号に近づけていくようにフィルタ係数を自己調整する機能を持ったデジタルフィルタです。 エコーキャンセル/ハウリング抑制 アクティブノイズキャンセル(ANC) |
高速同定による適応制御高速H∞フィルタを利用した高速同定と高性能な適応制御、適応フィルタと応用 エコーキャンセラ、ノイズキャンセラ ハウリングサプレッサなど |
組込みシステム開発技術展 エコーキャンセラー付き音声認識第12回 組込みシステム開発技術展において |