音響システムの音量や音質を測定するために音響測定では次のような信号を利用します。
スイープ信号 (Sweep signal) |
スイープ信号は、連続的に周波数を変化させた信号です。 1つの信号で一度に任意の周波数帯域の特性を測定したいときに便利な信号です。 スウィープ信号は、建築音響測定や音響機器の測定に使用します。 |
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トーンバースト信号 (Tone burst signal) |
トーンバースト信号は、一定周期のみの正弦波と無音部からなる試験信号です。 音響機器に突発的な信号が入出力した時の立ち上がりと立下がりを表した過渡特性の測定などに使用されます。 レベルが違うトーンバースト信号を複数組み合わせることで、一度に音響機器の応答波形を見ることができます。 |
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パルス信号 (Pulse signal) |
パルス信号は、非常に短い信号波形の直流信号です。 そのまま音にすると、「プッ」、「パッ」というような音になります。 インパルス応答を測定する目的で利用する信号ですが、測定機器の特性が影響するため、 現在は、時間的に連続したM系列ノイズやTSP信号が利用されます。 |
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TSP信号 (Time Stretched Pulse) |
TSP信号は、パルス信号の位相が周波数の2乗に比例した信号です。 短時間のスイープ信号になり、聴感上は、低音から高音に向けて「ピューッ」というスイープ信号のように聞こえます。 インパルス応答を測定する目的で利用します。測定では、複数回の同期加算平均で外乱ノイズの影響を低減した上、 逆関数による解析によってインパルス応答を算出します。 |
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M系列ノイズ |
M系列ノイズは、音がホワイトノイズに似た擬似ランダム信号です。 MLS(Maximum length sequence)法によって作られるM系列は、デジタル回路ではローコストにノイズを生成できるため、 擬似ホワイトノイズの生成手段として、また、インパルス応答の測定に利用されます。 |
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ホワイトノイズ (White noise) |
ホワイトノイズは、単位周波数帯域(1Hz)に含まれる成分の強さが周波数に無関係に一定の雑音です。白色雑音とも呼ばれます。 一定幅の周波数帯域で音量=パワーで見たときには周波数が高くなるにつれて3dB/octで高い周波数の方が高くなるため、 音響測定などでは、-3dB/octのフィルターを通したピンクノイズが利用されます。 |
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ピンクノイズ (Pink noise) |
ピンクノイズは、ホワイトノイズに-3dB/octのローパスフィルターを通した雑音です。 グラフにすると周波数が高くなるにつれて右下がりの周波数特性になります。 一定の周波数帯域ごとのエネルギーが均一になるため、周波数帯域別の音量を評価する目的に適した雑音です。 |
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オクターブバンドノイズ (Octave band noise) |
オクターブバンドノイズは、ピンクノイズからオクターブ(1/1,1/2,1/3オクターブ等)の周波数帯域を取り出したノイズです。 オクターブを基準とした一定の周波数帯域の音量を測定評価するため、ピンクノイズ同様-3dB/octの周波数測定を持つ雑音から 1オクターブ、1/2,1/3オクターブ幅の帯域をバンドパスフィルターを通過させて利用する雑音です。 |
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その他のノイズ |
これらの特性のノイズ信号は、特定の目的で利用するために考案され、一般に広く用いられている雑音信号ではありません。 |
インパルス応答は、音響空間にパルスを放出した時の応答波形です。 通過した経路の周波数特性や反射信号などが含まれるため、 インパルス応答を測定すると、音響解析や音場補正など音響的な測定や信号処理に利用することができます。
インパルス応答は、パルス信号を経路に入力した時の応答出力信号ですが、 音響空間で純粋なパルス信号を用いて測定しようとすると、急峻な振幅レベルと非常に高次までの高調波を持った信号のため、 再生系の音響機器の特性やマイクなどの収音経路の特性に強く影響されます。
パルス信号は、歪やレベル変化の点でも扱いが難しいため、TSP信号やM系列信号のようなパルス信号がもっている周波数上の性質を持つ連続的な信号を 利用し、信号処理によってインパルス応答を算出する方法が取られるようになりました。
TSP信号は日本で開発された信号でもあり日本国内では主流となっていますが、欧米では、一般にインパルス応答の測定にはM系列ノイズが利用されます。
TSP信号は、振幅の大きなスイープ信号であり、音響機器での再生、収音が容易なため、建築物など、実際の音響空間の特性を測定するのに適しています。
M系列ノイズは、雑音として再生、収音した測定結果の相関によってインパルス応答を求めます。 雑音信号となっている連続した信号の時系列変化の相関結果に影響を与えるため、再生系のジッタや応答波形の時系列に影響を与える目的では利用しにくい面を持ちます。
TSP信号とM系列はそれぞれ適した用途がありますが、 音響空間のインパルス応答の測定では、どちらの信号を利用する場合でも 暗騒音の影響を低下させるために、通常、複数回の測定結果の同期加算平均による雑音除去が行われます (測定方法によっては特許も存在しますが)。
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