3.音達試験による調査と問題の把握、予想

音響シミュレーションによる防災行政無線放送の音達 診断と改善
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3.音達試験による調査と問題の把握、予想 音響シミュレーションを利用した音達の診断と改善

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3.音達試験による調査と問題の把握、予想 - 防災行政無線放送の音響技術サービス
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防災行政無線放送の問題を診断し、 「聞こえない」「うるさい」という問題点を改善するためのファーストステップとして、 試験放送を実施して現地で音響測定を行う音達試験が実施されることが一般的です。

音達試験による調査 試験放送と音響測定による市街地での実態調査

音達試験 - 音響測定

音響測定による調査は防災放送の音量を定量化して実態を把握するのにかかさせない作業です。 測定作業は測定エリアで試験放送を実施し、市街地で音量(音圧)を測定します。

音響測定を市区域の全域にわたって細かく実施すれば、 より詳細に正確な実態の把握が可能となりますが、 実際に詳細な調査が行われていることは稀でしょう。 それにはいくつかの理由があります。


  • 試験放送の繰り返し
  • 測定環境・条件の均一性の担保
  • コストと時間
防災行政無線放送 - 音達試験、測定の問題

音響測定を行うには実際に子局(スピーカ)から実際の放送と同程度の試験放送が必要です。 数多くの測定点のデータを集めるには、 いくつかの問題や測定環境の同一性が確保できなくなる可能性があり、 さらに、前節でも述べたように、 大量の測定点について実施するのはコスト、経済的にも難があります。

音響測定による詳細な調査の難しさについて、もう少し詳細に考えてみます。

試験放送の繰り返しの問題

防災行政無線放送 - 試験放送

音響測定を行うためには、 何等かの音声を実際に子局から放送して聴取ポイントで測定する作業を行います。 音響測定は音源から音を発して測定点で測定する必要があるため、 測定する度に試験放送を行うことになります。

放送エリア全てを一度に測定できれば、 試験放送は1度だけ行えばよいのですが、 作業員はいかに動員をかけようとも限られます。 測定ポイントを多く、広いエリアを評価しようとすると、 試験放送を繰り返し実施して作業員が移動しながらデータを測定、収集します。

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試験放送には、いくつかの放送内容が考えられますが、 「うるさい」という問題を含む調査を行っている時に、 何度も試験放送を繰り返すことが好ましいことではないことは間違いありません。

音達試験は、非常時と同様、十分な音量の放送を行う必要がありますので、 控え目に放送するというわけには行きません。 「こちらは××市です。これから放送設備の試験放送を行います」 のようなアナウンスと共に測定用の信号が流れます。 測定信号には目的によっていくつかの種類が考えられますが、 信号にも耳触りといえそうな信号音が使われる場合もあります。

このような音達試験は住民に理解を求めるだけでなく、 できるだけ少ない回数、短時間で実施したいと誰もが考えます。

測定環境と条件、制約

市街地での音響測定は、理想的な条件下で測定することは困難です。

防災無線放送 音達試験 : 騒音、突発音 - 飛行機、電車、自動車、工事、通行人など

試験放送を行っている時に飛行機やヘリが飛来したり、 近くで大きな声を出されたり、 自動車が通過、サイレン音など、突発的な騒音が発生すると、 再度、測定をやり直す必要が生じます。

騒音

学校の登下校時や通勤時間帯に道路で測定を行えば、 子供の声や自動車の音が不適になる可能性が高くなるため、 時間帯や場所を選ぶ必要があります。

防災無線放送 音達試験 : 悪天候 天候

強風が吹いたり、雨が降ったりしている状態も、測定には適していません。 雷雨や降雪、台風などは言うまでもありませんが、 音響的な問題以外に屋外での作業であるため、悪天候下での作業性も問題です。

時間

試験放送ができない日、例えば選挙日などで放送が使われる日や、 放送設備のメンテナンス日は通常、作業ができません。 夜間など試験放送ができない時間帯もあります。

測定には突発的な騒音が発生する可能性が低い時間、場所を選び、 天候が許容範囲であることが前提条件となります。

測定条件の均一性

きめ細やかな放送エリアの測定を行うには、 多くの場所で測定することが求められますが、 まず、条件によって測定のポイントが制限されます。

防災無線放送 音達試験 : 測定条件 - 気温、風向、時間帯など

限られた人員で多くの場所で測定を行うには、 移動しながら繰り返し測定作業を行いますが、 試験放送の回数が多くなることの問題以外に、 数日間かけて測定した場合に、 測定環境、条件が近い状態でそろえることが難しくなるという問題もあります。

午前中は無風だったのに午後は強風に変化するなど、 風向きが変化することは、測定条件の均一性を担保するのに障害となります。

防災無線放送 音響測定 - 風向きによる音の伝搬

音は空気の振動として伝達していますので、 空気自体が変化している風は音の伝達に影響を与え、 同じ場所で測定したとしても、風の方向が異なると測定結果は異なった結果となります。

このような測定条件の差は、許容するべき誤差とするしかありませんが、 定量化という目的からすると、 測定データの測定条件はできるだけ均一であることが望ましいことは言うまでもありません。

数日間かけて音達試験を行えば、天候の差はもちろん、 測定している時間帯が測定点ごとに違うということは回避しがたいため、 測定結果には容認さざるを得ない差が存在しています (これが大きいとみるか無視できると考えるかは評価者によって差があります)。 しかし、市街地での音響測定においては、このような測定環境の差を許容しなければ、 現実に測定を実施することはできません。

かけるべきコスト、時間

人員の数か測定回数か、何れにせよ、のべ測定回数分のコストが必要となります。 多くの場所で測定を行うには、コスト増が次の問題となります。 音響測定の実施には測定作業をしたデータを分析に適した形にまとめる必要があり、 多数の測定結果を作れば、測定作業ほどではないにしても、 そのデータ集計作業も確実にコスト増となります。

防災無線放送 音響測定 - コストと人員

測定調査は、細かく測定すればするほど測定点ごとの変化が少ない無駄に見えるデータが 爆発的に増加したように見える結果となることは実際に実施してみなくても明白です。 有意義な数少ない場所を見つけるために数多くの無駄が生じることは、 その無駄が支払うべきコストと見なせるかという点に尽きます。

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この問題はリスク管理の観点から適正コストを考える必要があります。

おそらく徹底的に詳細に調査することが適正コストと考える人は少なく、 作業性や測定条件の制約、試験放送の繰り返しなどを考えれば、 むしろ、測定数を極めて限定的に実施することが求められることでしょう。

測定ポイントの予測的選定

このように、コストや制約、効果を考えると音響測定による調査は、 限定的にかつ効果的に実施することが必須となり、 測定調査すべき場所を限定的に選定する必要があります。

防災無線放送 - 音響測定ポイントの予測と選択

測定数を限定するということは、 測定作業以前に「測定する価値がある場所」の見込みがついているということが前提となります。

では、どのように見込みをつければ良いのかという疑問が生じます。

測定条件の制限に関して述べたように、市街地での測定は様々な要因で制限されるため、 必ずしも「測定する価値がある場所」、時間帯で実施可能になるとも限りません。

測定する場所の見込みは、どのようにして決めればよいでしょうか?

住民の苦情や要望が届いている場所については、音達問題が存在すると明白ですが、 既知の問題個所だけで十分だとは考えにくく、 予測や仮定によって測定検証するポイントを選ぶ必要があります。 予測や仮定ということは、専門の技術者の経験や勘によるといっても過言ではありません (有用ではありますが)

平面図上の予測と現実の差

一般に技術者が注目するべきポイントを選択する時に目安とするのは、 スピーカの指向特性を平面投影した平面図上での音量(音圧)です。 加えて、遮蔽物、建物などが存在しているかを考慮し、測定条件を満たす場所を選択します。

防災無線放送 - 音達試験と平面図の予想の差

建物の影響は平面図では的確に判断することはできないため、 建物の考慮は経験などによるものとなります(全ての建物の高さや立体形状を把握するのは難しい)

この測定ポイントの選択方法は、厳しく見れば、不確実性を内包しているといえます。

防災行政無線放送の音響測定による分析は、 測定点や条件の時点ですでに、制限や、不確実性があり、 限られたポイントについてのデータが得られるのみで、 音響測定をきめ細かく行うということは現実には難しいことであるということが判ります。

技術者が音達問題が発生しそうだと的確に予想できたとしても、 音達実験によって、その場所の実態を確認することは叶わないということも十分あり得ます。

さらに加えると、 測定した結果の分析や診断を行う場合にも予想と違っていた場合に 予想と異なる原因を的確に判断することは難しいので、 測定作業を無駄にしないことを優先的に考えると、 予想と実測が一致しそうな場所(容易に予想できる場所)を選ぶというような、 目的(問題個所を掴みたい)からやや逸脱しているかもしれない 選択基準がとられることも考えられます。

音達試験の限界とシミュレーションの可能性

このように考えると、音達試験=音響測定による調査は、 測定可能な範疇で、予測された結果が正しいことを確認する程度が限界かもしれません。

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ARIは、このような音達試験では不可能な広範囲の音達状況を予測するために コンピュータによる音響シミュレーションを利用すべきだと考えています。 シミュレーションであれば、試験の制約や場所の制限を受けず、 実際の測定では不可能な広く、細かい多数の場所の計算が可能です。

シミュレーションにも計算上の制限や限界がありますが、 得られる計算結果は、一定の条件下における客観的な予測指標とすることができます。

次に音響シミュレーションの利用と利点について述べます。



Inter BEE 2014 参考出品の報告 - 幕張メッセ 2014年11月19日(水)〜21日(金)

放送用音声比較装置 ABE-2100Cを国際放送機器展に参考出展しました。 ご来場ありがとうございました。

Inter BEE 2014(国際放送機器展) 放送用音声比較装置 ABE-2100C (Sound Comparator) 参考出展の報告

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