このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64(2002年8/15〜2004年11/18)に音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
最近はCGを活用した映画がメインストリートといえるほどCG映像を使った、さらに、フューチャーした映画が多くなっています。 音声系もドルビーサラウンドの劇場を前提に、絵に負けない「音量」の映画が多いようです。
最近(2004年7月掲載時)の公開映画の中にCGを使い人や船などのモブシーンが活用されている「トロイ」という映画があります。 シュリーマンのトロイの遺跡で実話として世界的に有名になったあの木馬のトロイを扱ったものです。
▼「トロイ」公式サイト
http://www2.troy.jp/
CGのモブ(群集)シーンが活用され広大な土地で展開されたであろう古代の戦闘シーンは映画「トロイ」の売物の1つでしょう。
この映画を観た方の感想に、戦場がデットな空間なのに剣の音効は、長い残響音がついていて非常にライブな空間の音になっていることが気になると述べているものがありました。
昔の屋外(草原や丘陵)のでの歩兵同士の剣劇の盾と剣の発する音は、城壁に囲まれている場所や屋内と異なり残響音はしないので剣の音などにつけられた残響付きの効果音が不自然に感じる人もいらっしゃるかもしれません(ほとんどの人は気にならないような気もします)。
本気で全ての面についてリアリティを追求するとトロイの言語は英語ではダメで古代のラテン語などで世界共通で字幕付きにでもしないといけませんし、BGMも日常では流れないので無しに……
CGはモデルを作り光を計算してシミュレーション的に映像が作られていますが、音は従来通りのミックスをサラウンド対応で作られているというのが普通ではないかと思います。
音響効果では、本物が録音されることもあるでしょうが、映像に合わせて1つ1つはめ込むように当てるというのが普通です。 必要に応じて本物の音を録音したり、ライブラリ素材を当てることもあれば、イメージとして適した音が造り出されることもあります。 映像とあわせた時、監督の演出意図が達成されることが重要ですから本物に近い音が使われているばかりではありません。
「レイダース/失われたアーク」という映画ではヘビが大量(2万匹らしいです)に出現するシーンがありますが、音は小鳥の声をサンプリングしたものをピッチを高くした音が使われています(「インディジョーンズ/最後の聖戦」の大量のねずみに小鳥だったような気もします)。
この場合には、SFの実在しない音のように、イメージに合う音を造るという方法が取られています。
TVの時代劇で人を切るシーンの「ズバッ」とか「グサッ」とかいう音がキャベツを切る音だったりするのは有名ですが、かつて人気の時代劇の「必殺シリーズ」の中では、「針で刺す」「かんざしを刺す」などのシーンでも「プス」とか「ズブ」とかの音効がつけられています。
実際に「針で刺す」とどのような音がするか実験して見るのはお勧めできませんが……音はしないですね。
「トロイ」の剣の音も、デットに「チン」と音をつけると映像が派手なだけにチープな戦いの印象になるのだと思います。
スペクタクル系の音効では、さらに、盛り上げるところで音量を上げないといけないでしょうし……多分、音効さんはわかっているけど他にやりようがないのだと思います(キビシイ条件ですよね。きっと少しリアルに音効と付けると「音がヤバイです」ってリテイクです)。
音効の違和感は時々聞くことがあるのですが、他にも音楽の定位、特にドラムの定位の方がむちゃくちゃと言えるかと思いますが(劇場のサラウンドいっぱいのドラムセットってどんな人が叩いているのでしょう)、これが変だという人は聞いた記憶がありません。
経験や知識、観ている時の意識によって音に対する感じ方は違うので、ドラムの場合には「リアル」ではないことは誰もが知っているけれども、そのようなミックスが「普通」だと認めているということでしょうか。
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