このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64(2002年8/15〜2004年11/18)に音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
あまり目立たないニュースでしたが、今月(2004年2月掲載時)、チェンバロ製作者の方が、特別天然記念物に指定されているタンチョウヅルの羽根を使いたいと申し込んで環境省に拒否されたというニュースがありました。
▼「チェンバロにタンチョウヅルの羽根
難波修さんが構想 環境省、提供拒否 /岡山」
Yahoo! News 地域 - 岡山ニュース 2月6日(2004年2月掲載時)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040206-00000001-mai-l33
絶滅危惧種に指定されている鳥などの抜けた羽根でも譲渡には制限がされるというのは初めて知りました(当然ですね、動物によっては、オークションにされたり、高値で販売されたりということにもなりかねないですし……扱いは規則どおりでないと問題がありそうです)。
チェンバロ(ハープシコード)は、現在のピアノにつながる鍵盤楽器です。
ピアノは打弦方式ですが(ハンマーで弦を叩いて発音する)、チェンバロは撥弦方式です(弦を爪ではじいて発音するギターのような方法)。
チェンバロには、鍵盤による音の強弱コントロールはなく、演奏者の表現する手段が限られる楽器でもあります。 チェンバロから現在のようなピアノに発展する過程には様々な改良や発明が加えられます。
ピアノフォルテは、現在のピアノの元祖とも言える鍵盤楽器に音の強弱(ピアノとフォルテ)をつけることがねらいで開発されたものです。 ピアノフォルテの登場によって、鍵盤楽器の表現力が豊かになり、オルガンやチェンバロとは異なる音楽表現へと発展して行きます。
▼「久保田彰チェンバロ工房」に「チェンバロができるまで」
という筐体の組み立て時の写真が掲載されています。
http://www.bekkoame.ne.jp/~sakazaki/eki/kubota/
ピアノフォルテが登場した同時期には、鍵盤楽器に限らずいろいろな楽器の改良が盛んに行われています。 音楽の授業などに出てくるクラシックの古典の時代です。
このピアノフォルテの登場した時期は、丁度、ベートーベンやモーツァルトの時代です。 モーツァルトは、多数のピアノ曲やピアノ協奏曲を作曲していますが、初期のピアノフォルテでの演奏を前提としているため61鍵盤の音域になっています。
モーツァルトが多用する演奏方法も、チェンバロと類似したトリル(連打)を持続音の代わりのように使っていることが多いのもピアノという楽器の進化と無縁ではないでしょう (非常に長いトリルはモーツァルトの特徴ですね)。
直後の時代のベートーベンは、76鍵盤、88鍵盤と後期になるにつれて音域が広がったピアノ曲が存在しています (現在のピアノは88鍵盤、シンセサイザーなどのライトウェイト鍵盤は61キーがポピュラーな鍵盤数です)。
これはピアノの音域が拡大されるのと同時に利用可能な鍵盤を最大限利用していることの現れといえるでしょう。
交響曲の3番のホルンといい、ベートーベンは新しい楽器と斬新な利用方法を好んだ人のようです (3番までホルンはリードパートを演奏するような楽器として使われていません)。
現在のピアノは、スタインウェイ社のコンサート・グランドに代表されるように近代化によって、さらに大音量に、響きやハンマーアクションを改良したものです。
鉄骨のフレームや弦の張り方など沢山の改良がほどこされているため、初期のピアノフォルテとは大分、音も、大きさも機構も異なっています。
チェンバロの時代には、ダンパー(鍵盤と連動して弦を押さえて消音するための消音機構)にもペダルコントロールは最初はついていませんし、当然ソステヌート・ペダルなどもありません。
▼野神俊哉:チェンバロ製作家
「〜ダンパーペダルを使った世界最初の試み〜」というページで
ダンパーペダル付チェンバロも製作されているらしいことが判りました。
http://sky.zero.ad.jp/jsd/jsd/d-works/Nogami/Nogami.html
チェンバロに話を戻すと、撥弦部の爪にタンチョウヅルの羽根を使おうということのようですが……これはむずかしそうですね。
ピアノの鍵盤の白鍵の象牙も難しくなったように従来の材料にこだわるのは難がありそうです。
記事によると「環境問題やリサイクルに関心を持ち、視野を広げることにつながると思う。」とおっしゃっているようですが、環境問題はともかく、リサイクルに結びつけるのは……少し無理があるような気がします。
工業用プラスチックなどで代替しても、楽器の「音」が守られていれば、伝統の楽器といっても良いのではないでしょうか。
現在のピアノは、クラシック音楽の楽器として用いられていますが、鉄骨フレームなどが導入された 工業技術を用いた高度な楽器です。ピアノ誕生した当時の音とは異なることも認識された上で、なお、愛用され、古典も演奏されている楽器でもあります。
音響システムやオーディオ、AVに関連した雑記
「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64に 音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.41〜503D音響システムとスピーカ・アレイ Iosonoとサラウンド / プレーヤーとメディアのハイブリッド化(BD,HD DVD,DualDisk) / デジタルアンプとデジタルスピーカ(D級アンプと消費電力, 特徴-シンプルな構成- パワーアンプと伝送 -効率,発熱,クロスオーバー,デジタルスピーカの特徴) / 自衛隊の大砲を使ったコンサート / コーデックキラー(音声圧縮エンコードとノイズ) |
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サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.31〜40 |
サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.21〜30 |
サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.11〜20CDを再生できないCDプレーヤー CCCD(Copy Control CD) / 音質は確実に落ちている? / 手軽に音響測定 / アカデミー音響賞、音響効果賞 / デジタルTVの双方向性 / テクノロジーと本質の視点( デジタル・オーディオは高音質か? ) / PCMはCDと同じ? / デジタルアンプの時代( デジタルアンプのコンシューマ化 ) / オーディオ機器への音楽配信 / 家庭の音場補正 |
サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.01〜10デジタルオーディオと記録 DVD製造者認識コード(Disc ID) / CD誤り訂正と音質、ピット、誤り訂正 / CDリッピングで音質向上? / パソコンのサウンド機能 / 人間の耳−最も優れた音のセンサー(精密測定用マイク, カクテルパーティー効果) / パソコンの静音設計とノイズ / ホームAVサーバー / TV放送の音声と帯域 / パソコンVS家電 - データ交換 / DVDの評価表現「劇場上映時と」 |
音響測定、音圧レベル分布、伝送周波数特性
「アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ」のvol.1〜10に連載していた 音圧レベル分布と伝送周波数特性に関連したコラムをサウンド コラムのページに編集して掲載しました。
サウンドコラム 音響測定編 音圧分布音圧レベル(SPL)、オクターブバンド、dB、ノイズ |
サウンドコラム 音響測定編 周波数特性周波数、基音と倍音、無響室、フラット再生 |