3D音響のトラッキング付き配信

サウンドコラム 音とオーディオの四方山 vol.29
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音とオーディオの四方山

3D音響のトラッキング付き配信

ヘッドホンの立体音響/ヘッド トラッキング/テレヘッド
29

このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12~vol.64(2002年8/15~2004年11/18)に音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。

10月28日(2003年11月掲載時)にNTTコミュニケーション科学基礎研究所 人間情報研究部が報道向けに開発中の「テレヘッド」というダミーヘッドを利用した3D音響の配信装置を報道向けに公開したそうです。

  ▼コンサート鑑賞は身代わりの人形が NTT R&Dフォーラム2003 in 厚木
    インプレス インターネットWATCH 10月29日
    http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2003/10/29/941.html

このテレヘッドという装置には、3軸のモーターを装備しヘッドホンのセンサーに合わせてダミーヘッドが動く、遠隔状態で3D音響のヘッド・トラッキングを行うダミーヘッドです。

ヘッド・トラッキングというのは、頭の動きに追従(トラッキング)して、フィードバックを行うもので、立体音響の場合、音源の位置が頭の方向にあわせて相対的な関係を移動させることで、その場にいるような音場を作ります。

立体音響では、耳の位置差が大きい斜め方向や左右方向の方向感はうまく行きますが、前方、後方の方向感が弱い傾向にあります。

ヘッド・トラッキング技術を利用すると、例えば正面に定位する音源に対しても頭の動きとの相対関係が保たれることによって、定位感が改善され、全体にリアリティが増した立体音響空間が再現されます。

ヘッドマウントディスプレイと立体音響

ヘッドホンの定位と立体音響、ヘッドトラッキングについてお話したいと思います。

ヘッドアクショントラッカー

ヘッドトラッキングというのは、映像や音を人の頭の方向に補正するために、頭の方向を検出する技術のことです。

ソニーから、ヘッドトラッキング機能付きのヘッドマウント・ディスプレイ(液晶ディスプレイにヘッドホンも付いています)が発売(9/26発売)されました(2003年11月掲載時)

ヘッドトラッキングという技術自体は10年以上前からある技術ですが、コンシューマー製品で登場したのは、記憶にある限り初めてだと思います。

SONYのヘッドマウントディスプレイ「PUD-J5A」は、 ヘッドアクショントラッカー(Head-action Tracker)機能という頭の上下左右の動きを検出して出力するセンサー機能を持っていて、 PlayStationゲームの仮想空間を演出することを目的としているディスプレイ装置です。

対応ゲームソフトで使用すると、仮想映像空間の全方位を見渡せるようになります。

音の定位にも対応すると思います。

ヘッドホンの立体音響

ヘッドホンを利用した立体音響技術というのは、古くから数々あるのですが、主に2つの音響、要素技術の組み合わせや応用によって実現されています。

  • 1.音量と左右の時間差(および位相)
  • 2.頭部周辺と耳たぶなどによる周波数特性や反射による変化

ステレオスピーカを利用したSRSなどの3D音場のシステムでも基本的には同じです。

スピーカの場合には、聴いている人の左右別々の音になるようにするために左右の音の分離技術が加わりますが、ヘッドホンの立体音響と原理は同じです。

スピーカの場合には、耳に届く音をヘッドホンのような左右独立の音源にするためのキャンセル技術が工夫されています。

1.音量と左右の時間差(および位相)

1.の音量と左右の時間差は最も基本的な技術です。

最も簡単な例でいえば、左右90度方向の音源の音は、片側の耳に大きな音で早く届きます。

ミキサーのパンポットやオーディオの左右バランスは音量による左右定位です。

このような音量差がステレオ音場の基本であるように、音量の左右差の支配力が大きいことは容易に理解できます。

時間差は、ディレイ(時間遅延装置)ダミーヘッド録音を利用した場合の音の到達時間差によって立体感が増すことでも、やはり、かなり重要な要素であることが判ります。

ところが、正面、背面、そして上下方向は、左右の音量や時間差では克服できません。

音量も、到達時間も同じ0度と180度(真後ろ)の方向については、左右の音量も時間も全く同じなので、ステレオの左右の音に差が発生しません。

2.頭部周辺と耳たぶなどによる周波数特性や反射による変化

そこで、2.の周波数特性や、反射などが必要であることが判ります。

頭部周辺の反射や耳たぶの指向性(主に前方を集音してますから)などによって前後などを判断していますが、これは多分に後天的な経験などから学習されたものですから、人による個体差があります。

機械的に特性をフィットさせることが難しいため、周波数特性などを利用した定位感は、平均的なモデルを基準に信号処理されています。

立体音響ではおなじみのダミーヘッド録音も、この2つの要素技術をダミーヘッドを利用することで実現したものです。

ダミーヘッドの大きさや耳の形状もやはり平均的なモデル(欧州の成人男性の標本調査による平均)ということになります。

このような立体音響も、斜め方向の距離感や上下感がある立体音響が得られますが、前後については、ヘッドホンで聞くと頭の中で鳴っているように感じ、立体定位感はそれほど豊かにはなっていません。

そこで、ヘッドトラッキング技術の登場となります。

ヘッド トラッキング

ヘッド トラッキングというのは、頭の動きを検出する技術です。

右を向けば、先ほどまで前方だった音は左側から聞こえてくるのが現実の空間ですので、頭の動きを検出してヘッドホンの音像定位に補正かけるのが、ヘッドトラッキング技術を利用した定位コントロールです。

人の頭部は完全に静止ししているわけではないため、厳密には前方の音源が真に正面方向に位置しているわけではありません。

そのため、ヘッドトラッキングを利用し、人の頭部のわずかな動きにまで音声の定位を補正すると、前方定位が改善され良好な定位感が得られるだろうという説がありましたが、説のようには、うまくは行っていないように見受けられます。

ヘッドトラッキング技術を使用していると一言でいっても、音量のみ補正しているだけでは、定位感にそれほど効果があるわけではないでしょう。

頭部周辺の反射やディレイなどの総合的な補正がされれば、立体音響として良好な音場が作れそうです。

10年ほど前には、髪の毛での反射をシミュレーションするための反射素材付きのダミーヘッド製品が発表されていました(短髪の人は適合しないので、どうかと思いましたが)、髪の毛の反射や遮音なども定位感に作用するということだと思います。

前方定位

前方定位の官能実験では、被験者に目隠しをして周囲360度にスピーカを配置して実験した結果が論文で過去に発表されています。

その実験の結果では、前方、後方は、方向感が弱いという結果になっていました。

別の実験では、周波数特性によって前方の定位を判断しているため、周波数特性を個別に調整して被験者に聞かせると、前方定位の識別が向上するが、個人差が大きいため、成人平均値ということはできないという実験もありました。

電子的な信号音だとどこで音がでているのかわかりにくいように、音色によって定位感が変わることも周知です(これは、電子アラーム音などで日常生活でも経験しているので実感できますね)

現実の空間でも、定位感のない音が存在したり、前方定位感が弱いということから考えると、完全な前方定位をヘッドホンで実現するのは、原理的にもかなり難しい(現実空間でも認識できないような特性なので)ということになりましょうか。

頭外音像定位

頭外音像定位は、かなりリアルにできる場合があることは、立体音響のデモなどをお聞きになった方ならご存知の通りです(立体音響の音は、過去に海外で少し流行しましたので、音響専門のCDでなくても、ポピュラー音楽のCDでも聞くことができます)

ヘッドホンで頭の中で音が鳴っているような状態(頭内音象定位)に対して、ヘッドホンをしていても、自然に近い距離感のある頭の外から音が聞こえているように感じる定位を指して頭外音像定位と呼ばれます。

頭外音像定位になると、ヘッドホン特有の閉塞的な定位感がなくなり、リラクゼーション音楽などには適しているのではないか思います(ヘッドホンの定位が好きという人もいますので、一概に良いとは断言できませんが)

立体音響は何年かに1回技術が進んだ時に注目されては、沈静化する(定着とまではいっていませんよね)傾向があります。

現在は、DVDの一般家庭普及によって 5.1chサラウンドの音源が沢山あることから、ふたたび注目(気味)です。

現代のデジタル信号処理技術とヘッドトラッキングを利用して、トラッキング補正付きヘッドホンがコンシューマ製品が登場するると面白いと思いますが、いかがでしょうか。

テレヘッド

「テレヘッド」は通信ネットワーク経由で使用して身体の不自由な人がコンサートホールの臨場感を味わえるようにするシステムなどに利用できると紹介されています。

ヘッド・トラッキングで「テレヘッド」のように実際にダミーヘッドを動かすというものは珍しいと思います。

開発中の「テレヘッド」では、アナログ回線とセンサーの線という組み合わせで実装されていましたが、ヘッドホンの代わりにマンスリーでも話題にしましたヘッドマウントディスプレイを利用して映像も含めてトラッキングをすると(ダミーヘッドにカメラもつける)、映像と音がトラッキングされてさらに疑似体験として面白いかもしれません。

「テレヘッド」は、現在のところは、モーターのノイズ音を拾ってしまうという欠点があるとのことで、モーターの静穏性を改善する必要があるとされています。

ダミーヘッド部分をロボットで実現されれば、ロボットにしか行けないような場所や、遠隔地で立体音響での擬似体験もできます。

ロボットにするとヘッドトラッキング意外に、本体の移動も可能ですから、より似体験的です。

この場合には、映像もステレオ・ディスプレイにして立体視にすると、さらに、面白いですね。

サウンドコラム 音響とオーディオの四方山

音響システムやオーディオ、AVに関連した雑記

「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12~vol.64に 音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。

サウンドコラム 音とオーディオの四方山

サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.41~50

3D音響システムとスピーカ・アレイ Iosonoとサラウンド / プレーヤーとメディアのハイブリッド化(BD,HD DVD,DualDisk) / デジタルアンプとデジタルスピーカ(D級アンプと消費電力, 特徴-シンプルな構成- パワーアンプと伝送 -効率,発熱,クロスオーバー,デジタルスピーカの特徴) / 自衛隊の大砲を使ったコンサート / コーデックキラー(音声圧縮エンコードとノイズ)

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サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.31~40

40音効とCGスペクタクル映画
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38海の音響技術 後編
海洋音響トモグラフィー/深層海流の計測
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31Inter BEE 2003 とHD放送
SD、HD、テレビ解像度

サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.21~30

30地上デジタルTV 開始とInter BEE
サウンドコラム 30
293D音響のトラッキング付き配信
ヘッドホンの立体音響/ヘッド トラッキング
28機械の音のリアクション
サウンドコラム 28
27音質?デザイン?
サウンドコラム 27
26米国のCD市場の変化とCCCD
サウンドコラム 26
25録音テープの「肉声」
サウンドコラム 25
24音の記憶
サウンドコラム 24
23過去と周期と予想
サウンドコラム 23
22魔法の杖と音声認識の確率
自動音場調整AVアンプのレビュー
21音響冷却方式と水冷式
サウンドコラム 21

サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.11~20

CDを再生できないCDプレーヤー CCCD(Copy Control CD) / 音質は確実に落ちている? / 手軽に音響測定 / アカデミー音響賞、音響効果賞 / デジタルTVの双方向性 / テクノロジーと本質の視点( デジタル・オーディオは高音質か? ) / PCMはCDと同じ? / デジタルアンプの時代( デジタルアンプのコンシューマ化 ) / オーディオ機器への音楽配信 / 家庭の音場補正

サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.01~10

デジタルオーディオと記録 DVD製造者認識コード(Disc ID) / CD誤り訂正と音質、ピット、誤り訂正 / CDリッピングで音質向上? / パソコンのサウンド機能 / 人間の耳-最も優れた音のセンサー(精密測定用マイク, カクテルパーティー効果) / パソコンの静音設計とノイズ / ホームAVサーバー / TV放送の音声と帯域 / パソコンVS家電 - データ交換 / DVDの評価表現「劇場上映時と」

サウンドコラム 音響測定編

音響測定、音圧レベル分布、伝送周波数特性

「アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ」のvol.1~10に連載していた 音圧レベル分布と伝送周波数特性に関連したコラムをサウンド コラムのページに編集して掲載しました。

サウンドコラム 音響測定編

サウンドコラム 音響測定編 音圧分布

音圧レベル(SPL)、オクターブバンド、dB、ノイズ

サウンドコラム 音響測定編 周波数特性

周波数、基音と倍音、無響室、フラット再生

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Inter BEE 2014 参考出品の報告 - 幕張メッセ 2014年11月19日(水)~21日(金)

放送用音声比較装置 ABE-2100Cを国際放送機器展に参考出展しました。 ご来場ありがとうございました。

Inter BEE 2014(国際放送機器展) 放送用音声比較装置 ABE-2100C (Sound Comparator) 参考出展の報告

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