このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64(2002年8/15〜2004年11/18)に音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
「IT化はローコスト化ではない」というITバブルに対する記事を見かけました(それほど最近(2003年4月掲載時)でもないかもしれません)。
IT化が即、ローコスト化をもたらすものではなく、IT化によって、業務が効率化できる場合には、業務のローコスト化が図れるのであって、多大な設備投資や、業務改善を伴わないIT化は、かえってコスト増につながるというものです。
あらためて言われなくても、あたりまえだという気がしますが、IT化に限らず、あらゆる技術について、このような「技術=何かの特性」と置き換えられた認識が一人歩きしているものは存在しているように思います。
IT(インフォーメーション・テクノロジ)は、業務ローコスト化の本質ではないという自明のものですがオーディオでは「デジタル=高音質」のような置換が存在しているように、様々な技術について、本質ではない認識がなされる場合は多いように思います。
▼やはり「IT」の用語説明といえば...
@IT(アットマーク・アイティ) Insider's Computer Dictionary
IT(Information Technology)【アイ・ティー】
http://www.atmarkit.co.jp/icd/root/44/748663944.html
あらためて語るまでもなく、「違う」ということは皆様も良くご存知の通りです。
ただし、デジタル・オーディオ聡明期にCDの規格や製品を持ってオーディオ評論などで語られたような、アナログ対デジタルという意味ではありません。
デジタル・オーディオの本質は、記録再現性(同様の理由で伝送経路での耐ノイズ性能)を「工業的」に高音質化することが比較的容易であるということに尽きるかと思います。
デジタル・オーディオの本質が、ノイズに強いわけでも、高音質なわけでもありません(アナログ・オーディオを支持するつもりではありません)。
工業的な技術によって伝送経路や記録媒体での再現性(ノイズや歪などによる劣化)を向上させるのに都合が良い方式であるというのが、デジタル・オーディオの本質であると言えます。
オーディオに限らず、通信も、映像も、NC加工なども全てデジタル化については同様の本質がスタートラインであることを認識することが重要です(さらに、信号処理技術や数学的手法による加工処理などを実現するのが容易であるというのも重要な点です)。
▼ご参考まで(内容に関係があるわけではありません)
EDN Japan Cover story 2003年4月号
「高分解能デジタル・オーディオ技術を総ざらい」
http://www.ednjapan.com/edn_j/2003/04/cover0304.html
余談ですが、かつて、80年代に、サンプリング音楽の楽器として名を馳せたE-mu社のイミュレーターという楽器がありました。
サンプリングというのは、音をデジタル録音したものをピッチ(音程)を換えて再生したり音質を加工することで楽器とするものです。
当時のサンプリング音源の解像度は8ビット(ノンリニア)、ですから当然、音はローファイです。アナログ楽器よりは、明らかにローファイですが、記録された音の再現性の高さというデジタルの本質は備えています(E-muの音の加工はアナログでハイブリット方式の音源と言えます)。
アナログ方式のサンプリング楽器には、メロトロン、ノバトロンというアナログテープを利用したものがあります。
今は、もう、テープ式の後継機はありませんが、音楽CDで音を聴く事ができます。
有名な所では、レッドツェッペリンの「天国への階段」という曲の冒頭のパンフルートの音がメロトロンです(昨年だったか、TVドラマの主題化になっていたので、TVスポットなどでも流れていました。しかし、スポットではパンフルートが出てくるところまでは使って無かったと思います。番組では7分を超える長い局をどこで切っていたのか知らないのですが、イントロはカットしていないと思います)。
▼E-mu社のアーカイプスにE-IIIなどの古い機種のカタログがあり
ます(E-MU/ENSONIQ社になっていることもあってヒストリーとい
うほど古いものまではありません)
http://www.emu.com/
▼ノバトロンはデジタルで生きているようです。
ドイツ・フランクフルト2003 musicmesseでの発表が
掲載されています(2003年3月6日)。
(株)フックアップの取り扱いです。
http://www.hookup.co.jp/
余談になりましたが、NC(数値制御)加工でも、職人のアナログ的感覚の方が上であっても、NC加工でデジタル化することによって職人技が、かなりのレベルまで再現できることが有用であると認識されています。
NC加工が精度があるもの」というのは、NCの本質ではなく、ある領域での再現精度が優れているということが重要な性質です(ご存知のようにハイテク、高精度ですが)。
写真、特にレントゲンなどでは、アナログ方式の方が再現精度が優れているかもしれません(現段階では)。
技術とその本質を見る視点というのは重要ですね。
音響システムやオーディオ、AVに関連した雑記
「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64に 音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.41〜503D音響システムとスピーカ・アレイ Iosonoとサラウンド / プレーヤーとメディアのハイブリッド化(BD,HD DVD,DualDisk) / デジタルアンプとデジタルスピーカ(D級アンプと消費電力, 特徴-シンプルな構成- パワーアンプと伝送 -効率,発熱,クロスオーバー,デジタルスピーカの特徴) / 自衛隊の大砲を使ったコンサート / コーデックキラー(音声圧縮エンコードとノイズ) |
サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.31〜40InterBEE2003とHD放送(SD,HD,テレビ解像度) / 闇と静寂 / 騒音性難聴の防止薬品 / チェンバロにタンチョウヅルの羽根 / 海の音響技術(低周波ソナー LFAS, SOFAR, SOSUS, 音響トモグラフィー, 深層海流の温度計測) / 開発者の音作りと発想(デジタルの音作りと哲学) / 音効とCGスペクタクル映画(映画の音響効果とリアリティ) |
サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.21〜30 |
サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.11〜20 |
サウンドコラム 音響とAV,オーディオの四方山vol.01〜10デジタルオーディオと記録 DVD製造者認識コード(Disc ID) / CD誤り訂正と音質、ピット、誤り訂正 / CDリッピングで音質向上? / パソコンのサウンド機能 / 人間の耳−最も優れた音のセンサー(精密測定用マイク, カクテルパーティー効果) / パソコンの静音設計とノイズ / ホームAVサーバー / TV放送の音声と帯域 / パソコンVS家電 - データ交換 / DVDの評価表現「劇場上映時と」 |
音響測定、音圧レベル分布、伝送周波数特性
「アメニティ&サウンド 音と快適の空間へ」のvol.1〜10に連載していた 音圧レベル分布と伝送周波数特性に関連したコラムをサウンド コラムのページに編集して掲載しました。
サウンドコラム 音響測定編 音圧分布音圧レベル(SPL)、オクターブバンド、dB、ノイズ |
サウンドコラム 音響測定編 周波数特性周波数、基音と倍音、無響室、フラット再生 |