このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.36〜vol.64(2003年8/21〜2004年11/18)に音響と開発の関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
前回に続いてF1チームとコンピュータ技術の話題を続けます。前回はF1車両のレギュレーション(規定)と技術に関してザッと書きました。
(※前回触れていない技術のABSや排気量の変化、タイヤ、燃料の規定など、コンピュータ技術関連以外にもスピードや安全性に関してのレギュレーション変更は行われていることをここで少し補足します。)
F1の車体に関わるコンピュータ技術については、時々F1の雑誌などで取り上げられるのですが、CNetの「ITが支えるF1世界最速技術」という記事の後編に掲載されているようなデータベースやデータロガー(テレメトリ)のデータの処理の話題はあまり見かけません。
マクラーレン・メルセデスは、記事にあるようにCA(コンピュータ・アソシエイツ)社をパートナーにしています。ウィリアムズ・BMWチームはHP社、フェラーリはAMDがスポンサー兼テクニカル・パートナーとなっています。
他のチームもそれぞれIT系の企業がスポンサーとしてだけでなく、ITシステムのテクニカル・パートナーとなっています。
タイヤや自動車パーツ、機械部品や無線など各種のメーカーと提携しカスタム・パーツを開発、生産する必要があるように、IT系も、ソフトウェアを含めて技術的な開発が必要なため、IT企業の車体のロゴはパートナーとしてのマーキングでもあることが多いかと思います(純粋なセールス・パートナーもあるので100%ではありません)。
プレスリリースなどで提携時に発表される「IT戦略システムで協業」のような発言を聞くと、チームの公式サイトでも立ち上げ強力するコマーシャル上の発表かと思ってしまいますが、テクニカル・パートナーとして参加している場合には、多少の差はあれCNetの記事にあるようなITシステム面で協力しているのだと思います。
▼ITが支えるF1世界最速技術(前編)
CNET Japan 2004.9.27
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000050158,20074778,00.htm
▼ITが支えるF1世界最速技術(後編)
CNET Japan 2004.10.04
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000050158,20074920,00.htm
記事に出ているマクラーレンというチームはトップチームであるというのみに留まらず、F1チームの中でも最も厳密なパーツ類の品質管理を行っている1つと言われているチームです。
パーツは設計やテストにおいても厳密に計画され、レースに勝つために必要な耐久度などにおいても製品の設計誤差が僅かになることが求められているといわれています。
品質管理が厳密なだけに、F1中継で1台がトラブルで破損すると「残る1台は大丈夫でしょうか」という発言に繋がっています。実際、マクラーレンの2台がほぼ同じ周回数で類似したリタイアを見せたことが何回かあります。
このようなシーンを見ると、設計やパーツ製造上の問題においてバラツキが非常に少ないことが想像できます。
このような管理は市販製品でも行われていますが、毎年異なる車体を設計し(しかもサーキットごとに少しづつ異なっている場合が普通です)、外注部品まで含めて品質管理を行うような戦略性が必要とされ、ITシステムにおいてもシビアな要求が行われているものと想像できます(トラブルが発生するとロン・デニスはかなり怖そうです)。
コンピュータ・シミュレーションは、風洞実験などと合わせて開発で行われているのとレース戦略(ピットストップなど)のシミュレーションが行われていることは、以前に何かで紹介されたものを見たことがありましたが、決勝中にもトランスポーターの中のサーバーでシミュレーションを逐次行ってパドックのノートPCと通信しているというのはこの記事で初めて知りました。
現在のF1は、エンジンが良い、ドライバーが良い、空力に優れるというような1点のみでは勝てないといわれており、トップクラスのチームは風洞設備やシミュレーションが必須とされています。
シミュレーションは当然コンピュータの出番ですが、テストの走行データの管理や分析など、言われて見るともっともなITシステムの活躍する場所があることに気付きます。
シミュレーション関係が増加しているのではないかとい想像しますが年々システムのデータ量が増加しているようです。
現在は、本番のレースは3日間1エンジンと決められているため、サーキットでレース・ディスタンスの長距離走行テストを行うのは、予備車の1台のみですし、共同テストもコストを削減する目的と、ドライバーの休日を確保するために回数を圧縮してきています。
テスト走行は減少方向にあるわけですから、データの詳細度が向上した代わりにテスト距離が減少して、それなりの増加量になるだけのように思いますが実際には相当増加しているようです(マクラーレンは独自のテスト走行も相当行っていそうなので走行量が減っていないかもしれませんが)。
CNetの記事には「2004年には8テラバイトまでに膨れ上がっている」など、F1専門誌でもあまり見かけない内容がいくつも紹介されていますので興味がある方はオススメです。
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