このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.36〜vol.64(2003年8/21〜2004年11/18)に音響と開発の関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
前回、話題にしましたようなレガシーシステムとされてしまうとシステム維持やレガシーシステムを専門にした技術者の確保も困難になって行きます。
部品化や再利用性そのとコストは開発手法やプラットフォームと密接な関係にあるためプラットフォームや開発言語の動向による影響が多大です。
そこで標準技術を確立し標準技術を利用することが求められます。
ソフトウェア技術には、デファクト・スタンダードやANSI規格、ISO,JISなどの規格されている技術要素もありますが、実際に実装を伴う規格品コードのようなレベルではありません。
工業規格の部品のようにJIS規格のネジ、MIL規格の……というような管理が確立された部品を採用するというところまでは産業が成熟していないといえるのでしょう。
かつて、太平洋戦争開戦時の日本海軍の艦船の部品は、規格統一されておらず、一隻の形式の艦ごとに設計された部品で造船されていたそうです。
補修備品も艦ごとになり、ネジのようなレベル全部品も艦ごとに管理しておかないと補修できない上、他の船の在庫部品があっても適用可能とは限らないという状態だったようです。
海軍の造船でも職人が技を以って造るという世界だったのでしょう。
工業生産力の強大なアメリカを相手に海戦を行う上で、海軍の生産力や補修の効率化は重要なポイントです(日本には溶接技術もなくアーク材料もドイツから入手しているような背景です)。
戦艦大和の建造で有名な海軍技官の西島氏が、海軍の部品の標準化を発案、推進したことで共通部品で設計されるようになったそうです(終戦間際には生産方式と艦船の標準化も行われています)。
世界最大の戦艦の建造は、材料の鋼板を造ったり職人の編成や工事手法の確立、ドックの整備などからはじめなければいけない大規模プロジェクトです。
国家の極秘プロジェクトですから、設計図も一部の主要な責任者を除いて一部分しか渡されておらず、ほとんどの関係者が艦の全貌を知らないまま分業生産するという体制で完成させた手腕は偉大なものです。
大和の建造は広島の呉で造られ、二番艦の武蔵は長崎で造船されたのですが、最初の大和は設計や製造上の課題を克服しなければならなかったにも関わらず、西島氏の指揮によって武蔵の半分の工数で完成しており、大和の技術移管を行ったにも関わらず武蔵は2倍の工数が掛かっています。
西島氏の独創的な生産管理手法は戦後の日本の造船業の躍進に寄与する偉大なものであったとされています。
生産管理、工程管理がいかに重要であるかを認識させられる逸話でもあります。
ソフトウェアの標準化や部品化は、大日本帝国海軍初期ほどではないにしても(少なくとも閉鎖的ではない)、問題としている点は、標準の確立や管理、工業的な設計という点で言えば、やはり、同様に発展途上にあるといえるでしょう。
ANSI規格のC言語や、各種標準化団体によって策定された規格などによって標準となっている技術もありますから、標準技術の全体に占める割合がまだ低いだけということかもしれませんが……
海軍の造船と戦艦大和建造については「戦艦大和誕生」という本で詳しく扱われています。
西島技官を主役として大戦初期から終戦まで書かれたものです。
現在は文庫になっています。
「戦艦大和誕生(上)(下)」前間孝則 講談社+α文庫
戦艦武蔵の建造に予定より大幅な工数が何故必要だったのかという三菱重工の戦後裁判記録を収録した書籍があったと記憶しているのですが見つかりませんでした(単に廃刊かもしれません)。
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