このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.36〜vol.64(2003年8/21〜2004年11/18)に音響と開発の関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
「HDD容量が広告の表記より少ない」と米国ロサンゼルスでコンピュータメーカーに対して集団訴訟を起こした人がいるようです。
10の3乗と2の10乗は、1000と1024と近い数値なので、コンピュータ系のメモリなどのサイズを表現するのに、SI単位表記のK(キロ)やM(メガ)、G(ギガ)などの単位で表現されることはご存知かと思います。
一方、同様にコンピュータのパーツのハードディスクは、単位系に等しく、 1MBは1,000,000バイトで扱われます。
ところが、WindowsやAppleのOSでは 2進数表記で扱うためOSのサイズとハードディスクのスペック・サイズが異なっているように見えます。
訴訟の容量違いは10進数表記の HDD150GB がOS上では2進数計算になり 140GB と少ないというものです。
まあ、わからなくて訴訟しているのではなく、金銭目当ての訴訟だと思いますが、陪審員制度のアメリカの訴訟なので、このような単純に見える問題もややこしいことになる場合もあるかもしれません。
この件は、コンピュータメーカー数社に対して「誇大広告」として訴訟していますが、単位系列を正しく表記しているHDD容量が悪いのか、類似した表現をしながらサイズが異なる単位をしている慣行がいけないのかという点で言えば、紛らわしい単位慣行を一般に対して提示していることの方がいけないのではないかと思いますが、訴訟で金銭を取るのに都合が良いストーリーとしてコンピュータメーカー側を相手にする必要があるのだろうと思います。
半導体とコンピュータOSのSI単位系使用が一般に混乱を招く可能性はずっと過去から認識されていた問題で、 Mi,Ki,Giなど別表現の提案なども策定させていますが、慣習として1024 = 1K、1024K = 1MBという表現が継続されています。
2進数のキリの良い数字は、至るところで現れ、家電などのスペックでも、最大8、16、32、64、128、256、512、1024... 32768 などの数字が現れます。
1024と表現せずに約1000以上、500以上などの表現をされる場合もありますが、正確な仕様表記も必要なため、あまり使われることは多くはないようです。
このような数値には、ある程度なれますから、 250や500というスペックの数字をみると正確には、256、512ではないかという勝手な推測をすることすらある始末です。
キリの良い数字は、対象や環境によって変化しますから、あまり普遍な存在ではありません。
例えば、128個を約100個とする方がキリの良い数字なのでイメージしやすいかというと、12進、60進数系列が多く用いられる分野では、約10ダース(120) のように表現する方がわかりやすいかもしれせん。
また、7セグメントのLEDやLCD表示機が主流の機器のスペックでは、表示桁から決定される最大99、999などの数字も多く存在しています。
以前、担当した機器の仕様を決定する時に、新モデルでは表示器の制約がなくなり、従来機種では±99としていた数値を±100としたことがあります。
この時、ある技術者から「数字が気持ち悪い」といわれた経験がありますが、これも人による慣行によるキリの良い数字として機器の仕様が100より99の方がキリが良いと感じていたということだと思います。
99を100に変更すると、開発している時に良く目にする内部表現の16進数が 63Hから64Hになって、感覚的に少しだけやりにくいと感じた局面もありました。
コンピュータのHDDの容量と一般の感覚に関して言えば、個々のファイルの表記上のファイルサイズと実際に使われている物理的なファイルサイズが異なりますし、10進数と16進数の違いからくるサイズ違いの他に、フォーマットすることで利用できる残りサイズが減少します。
さらに、システムファイルなどが非表示になっていれば、その使用済みサイズも謎の使用済み領域になりますし、仮想メモリのためのスワップ領域などもありますので、何も知識を必要としていない人にとってのHDDの利用可能領域は理解しがたい状態になっているかもしれません。
「天使の分け前」があるからと納得しましょうという冗談もあるようですが、几帳面な方には耐えがたい状態かもしれません。
これを機会にコンピュータのサイズ単位系の表現などが変更されたり、注意表記が強化されるのかもしれませんが... このような表記が一般に対して問題であるとされ、Mi,Ki,Giが策定されてからも既に5年ほどになります。
訴訟の行方はともかく、多くの関係者の方が改めて考える機会となっていることは確かですね。
「天使の分け前」とは酒類を樽で熟成中しているうちに「蒸発」して内容量が少なくなることを酒造職人たちが呼んだものだそうです。
1年で2〜3%程度蒸発するとのことですから、 12年ものなど25%から30%以上も蒸発してしまった状態から作られていることになります。
HDD容量もクラスタ サイズによって、コンピュータを利用してファイル数が増えるに従って、表向きのファイル・サイズ合計以上になくなって行きます(クラスタの未使用容量のために)。
「天使の分け前」のようだといえなくないかも知れません(小さいファイルを多数作ると分け前の方が多くなりますが...)。
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