このコラムは無料メールマガジン「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64(2002年8/15〜2004年11/18)に音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
DVDの評価を中心にDVDプレーヤーとソフトについて書かれていたコメントの中に「劇場と比較して」というような表現を複数見る機会があり、少し気になりましたので「劇場と比較して」について書いて見たいと思います。
「劇場の上映時とDVDを比較して...」というコメントをオーディオ系雑誌とWEBサイトととで見かけました。取り上げられていたDVDソフトは、どちらも「スターウォーズ エピソード2」です。
広告を兼ねてという性質が強いこともあってか、「エピソード1」と比較して画質が向上している点などが取り上げられていることが多いのですが、その中に「劇場での公開時のフィルムに比較しても高画質」とか「音響バランスがDVDの方が良いのではないか」などのコメントが記載されているものがありました。
この「劇場と比較して」は難点があります。
劇場=映画館での上映と比較することは良く判るのですが、都市部の大型の映画館では、スクリーン、客席、音響設備とも良好ですが、設備は同一ではありませんし、音量の調節なども上映館によって様々です。
一体、どの劇場で上映されたものをどの客席で評者が観覧したのかが問題でして、読者が見た上映、映画館と異なる可能性の方が高いですから、「劇場と比較して」のコメントによって想定される上映状態は正しく伝わらないように思います。
もし、読者が設備のない映画館で見ていれば、音響効果も、映像も、DVDの方が上質になる可能性は高いですし、最新設備でデジタルで見ていた場合、果たしてDVDが良好といえるかは疑問です。
ましてや、音響バランスについては、劇場の音響バランスや上映時の音量は、館ごとに大幅な開きがあります。
雑誌かWEBサイトの記事だったか失念しましたが、「アルマゲドン」という映画が公開された時、記事の筆者が「最近の映画は、音量が不必要に大きいと感じる」というテーマで、東京都内の「アルマゲドン」上映館で同一シーンの音量を実際に測定するというという記事がありました。
具体的な数値を上げて、上映館ごとの音量差が大きいことと、90dB台後半の大音響が連続する演出は本当に必要か(こちらが記事の本論です。同一の料金で上映館に差があることに問題があるという、大音量と上映館の差が記事のテーマです)という記事載されていました。
DVDの「スターウォーズ エピソード2」は「エピソード1」より高画質だと思いますし、良好な品質の製品だと思いますが、「デジタル上映に迫る」などの表現をするには、全体にソフト画調ですし、色ノイズが出るカットもあります。
DVD評価の複数の記事で「劇場の...」が使われており、これはDVDホームシアターなどの評価記事やDVDソフトの評価で良く目にしますが、良く用いられる「劇場の...」には客観性や基準がありませんので適切ではないですね。
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「アメニティ&サウンド音と快適の空間へ」 vol.12〜vol.64に 音響システムの関連コラムとして連載していたものを編集掲載したものです。
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