エコーキャンセラーは電話の通話時に生じる音響エコーを抑制する目的で利用されている技術です。 固定電話、携帯電話、スマートフォンの通話機能にはエコーキャンセラーが利用されています。
電話、携帯電話、スマートフォン用とそれぞれ製品により実装ターゲットが異なり、 搭載されている音声信号処理用チップによって性能と処理量を最適化する必要があります。 処理性能に起因する演算量によって性能差は生じますが、 J-FHF(高速H∞フィルター)は、演算タップ長の違いによるシステム同定性能の影響を受けにくく、 さらに、アーティフィット・ボイス シリーズでは、実装上の演算処理量を低減化し、 比較的低い処理性能のターゲットの場合であっても、 高性能なJ-FHFのエコーキャンセラーをご利用いただけるようにしています。
J-FHFによるエコーキャンセラーは、H∞制御による適応フィルターを基本アルゴリズムとし、 コア技術をNLMSによる軽量な適応フィルターに見られる、 ダブルトーク時や経路変動要因によるキャンセル性能の低下、もしくは、音声の破綻などが生じにくい 真の全二重通話用のために開発されたエコーキャンセラーの動作を特長とするものです。
有色音声に優位性を持ち、環境雑音と共に入力される音声の音響エコーに性能を発揮します。 ロバストで高速な収束性能に由来するダブルトーク時や経路変動に対する性能も、従来技術よりも、 より、自然な通話を実現します。
電話にはハンドセットの通話だけでなく、最も音響エコーや環境雑音の影響が 顕著となるハンズフリー、スピーカー通話の機能を持ちます(携帯電話にもスピーカー通話機能があります)。
音響エコーが少なく、相対的に環境雑音に対して話者の音声レベルが低い状態では、 エコーキャンセラーやノイズ・サプレッサーなどの性能が高くないと音質の低下が著しく、 そのため、スピーカー通話時にはエコー・サプレッサーによって強力にエコーを抑制するために、 実際には半二重通話のような動作になっている場合があります。
アーティフィット・ボイスはJ-FHFをコアテクノロジーに統合型ノイズリダクションによって、 ハンズフリー、スピーカー通話時の音質低下が少なく、全二重のエコーキャンセラーとして機能します。
電話や携帯電話のエコーキャンセラーは、送話側の音声がスピーカーから出力されてマイクに伝わり、 エコーとなって送信されることを受話側の電話器で抑制します。
ハンドセットで通話した場合にはスピーカーの音声が受話側の空間で反響するほどの音量ではありませんので 送話口と受話口の間を伝搬する音がエコーとなりますが、 スピーカー通話(ハンズフリー)の場合には、 大きな音量をスピーカーから出力しているため、室内で反響しているエコー成分も含まれることになります。 2つの状況はかなり差があるため、利用される通話状態によって動作を切り替えるような工夫がされています。
音響エコーは、ハンドセット通話の場合、 受話口のスピーカーから送話口のマイクに伝搬する音なので 音量が小さいですが、電話回線を往復する遅延を伴った音声が戻るのは通話しにくいため、 エコーキャンセラーによってエコーが抑制されています。
スピーカー通話の場合には、離れた位置にいる人にまで聞こえるような音量をスピーカーから出力しているため 部屋の反響も含めたスピーカーとマイク間で生じるエコーは大きく、エコーの時間も長くなります。
スピーカー通話時とハンドセットでの通話時は、 音響エコーもマイクから入る周囲雑音のレベルもかなり異なるため、 エコーキャンセラーやノイズ・サプレッサーの動作が異なる動作になっている可能性がありますが、 適応型エコーキャンセラーによる音響エコーを抑制する基本的な動作は同じです。
適応型エコーキャンセラーは、スピーカーからマイクに伝搬する送話側の音声成分を受話側の送信信号で抑制します。 適応フィルターは、反響した音まで含めた空間の伝搬特性(伝達関数)を推定し、 推定したエコー成分を受話側の送信信号から引くことでエコーを抑制しています。
伝達関数は逐次算出された結果で変化しつづける動作を行うため、 スピーカーとマイクの間の反響や伝搬する状態が変化しても追従しつづけます。
適応フィルターはスピーカーから出力している信号(リファレンス)が マイクから入力された信号の中にどのように含まれているのかを推定していますので、 マイクから入る雑音や受話側で話す声にもリファレンスの成分が含まれている可能性を計算しています。
そのため環境雑音や受話側の音声の影響で、音響エコーの推定を誤る可能性があります。
受話側の音声は、送話側の音声が無い状態であれば、音響エコーではないことは明白なので、 相互に話す場合に推定の誤りを回避することは容易です。 この単純な音声のレベル比較のみで回線レベルを制御しているアルゴリズムにエコーサプレッサーがあります。
ところが、同時に発声されるダブルトークの状態では、音声レベルの比較は有用に作用せず、 送信信号が途切れたり、誤った推定結果を用いることで送信信号が不正な状態になります。 ダブルトーク状態は、古典的なアルゴリズムのままでは、 キャンセル性能を維持することは不可能で、市販製品で採用されているエコーキャンセラーでは、 何等かの工夫した回路、処理が含まれています。
受話側のマイクに入力される突発的な雑音や周囲の音声なども ダブルトーク同様、適応フィルターの推定動作が不安定になりやすい要因です。
アーティフィット・ボイスJFEF-EC1401シリーズがコアテクノロジーに搭載している J-FHFのアルゴリズムはダブルトーク時や外乱ノイズに耐性がすぐれており、 加えて、DDC(ダブルトーク・ディティクション・コントロール)によって、 より、電話や携帯電話の通話音質が自然になるような機能構成になっています。
スピーカー通話の状態では、話者の位置は時々に応じて様々になり、 マイクに入力される音量も必ずしも通話に適した音量とは限らないことは言うまでもありませんが、 ハンドセットを用いる場合でも、ハンドセットの持つ位置や角度によってマイクと話者の口の位置は異なり、 安定したものでもないことも明らかです。
音量が携帯電話の持ち方で変化しつづけたり、通話に適した音量で使われていないことは当然なので、 送話音量は、AGC(オートゲインコントローラー/自動利得制御)による制御が行われます。
屋外で通話されることも当たり前な携帯電話は、周囲雑音を抑制するため、 ノイズ・リダクションによって通話音声のS/N(サウンド・ノイズ比)を向上することが必須です。 アーティフィット・ボイス シリーズのノイズ・リダクションは、 エコーキャンセラーのコアと連動し、より適した環境ノイズの低減に対応できるようになっています。
AGCなど付帯的な機能についてはご希望に合わせてカスタマイズいたします。
アーティフィット・ボイスJFHF-EC1401シリーズの電話用ソフトウェアライブラリは、 電話、携帯電話、スマートフォンなど多くの各種プロセッサーに対応可能です。
コアテクノロジーとしているJ-FHFは、JSTによって、日本はもとより、中国、米国、欧州、カナダでの特許が取得されていますので、 海外での特許問題はライセンス契約をいただけばクリアされます。
ARIはアーティフィット・ボイスシリーズにJ-FHFの技術を用い、J-FHFの特許使用権をJSTより取得しています。 JFHF-EC1401がそのままご希望の機能にフィットしない場合であっても、カスタマイズ等、ご相談いただけば対応させていただきます。
エコーキャンセラー・ソフトウェア製品についてご不明な点などございましたら、 ARI Artifit Voice担当までお気軽にお問い合わせください。 お客様の秘守に関しましては機密保持契約(NDA)を締結させていただいた上でご相談賜ります。