プロデュース表記が「細野+YMO」に変わり、このアルバムを称して「非常に暗いトンネルのようなサウンド」とはその細野の弁。一般的には生楽器の代用的使用方法だった「サンプラー」に非楽器音をとりこみ、リズムの基礎とする手法は、その後のヒップ・ホップにも大きな影響を与えた。このアルバムも近年特に人気が高い。
「テクノデリック」は、完成度が高かった前作「BGM」からさらにサンプラー(音を録音してピッチを変えるなどして再生する電子楽器)の利用とリズムによるアレンジに進化したアルバムです。サンプラーやEmuのイミュレーターなどのサンプリング楽器は以前から使われていますが、以前に比べてテクノデリックでは、SEのような音や打楽器的な利用方法が多くなっている点が利用方法に違いがあります。
「体操」などのキャッチにもBGMからのタイプとしても利用されなじみやすいタイプの曲もリズムアレンジはテクノデリック風となっています。「BGM」は、後のイギリスのエレクトロ・ポップやユーロビートなどにつながるようなシーケンサーならではの演奏という点で、テクノらしさが強いといえますが、「テクノデリック」は、リズムと性能の向上したサンプラーを利用したという点で、これまたタイトルとは異なりいわゆるテクノ系の音楽ではありません。
本来、楽器音ではないいろいろな音をリズムなどに利用し、あたかもオリエンタルな民族を思わせるリズムによるアレンジという方向になっています。BGMでは少し残っていたポップカラーがテクノデリックではなくなっていることが、「非常に暗いトンネルのようなサウンド」という表現になるのかもしれません。
この音色やアレンジ面でのテーマ性といったものは、このテクノデリックでピークに達し、次の「浮気なぼくら」では、単純に歌謡曲的な曲を「サーヴィス」では、S.E.Tとのコントコラボなど、全く異なる方向に切り替わります。その意味では、BGMとテクノデリックの2枚は同じような方向性をもっているといえるかもしれません。
復刻盤は坂本龍一、高橋幸宏の最新「YMO振り返りインタビュー」、そして細野晴臣東芝盤(1999年)インタビュー復刻掲載。1999年細野リマスタリング音源使用。
<オリジナル発売:1981年11月21日>
CD収録曲
1. ジャム
PURE JAM
2. 新舞踊
NEUE TANZ
3. 階段
STAIRS
4. 京城音楽
SEOUL MUSIC
5. 灯
LIGHT IN DARKNESS
6. 体操
TAISO
7. 灰色の階段
GRADATED GREY
8. 手掛かり
KEY
9. 前奏
PROLOGUE
10. 後奏
EPILOGUE
|