【Vol.15】2003年9月号 |
「ARIアメニティ&サウンド マンスリー」は、 毎月 第4金曜日にお届けしています。 みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、 今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。
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技術・開発コラム ■ 10の3乗と2の10乗 |
このコーナーは、
ディジタル機器の開発やソフトウェア開発にかかわることなど、
技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で
お届けできればと考えています。
「HDD容量が広告の表記より少ない」 と米国ロサンゼルスでコンピュータメーカーに対して集団訴訟を 起こした人がいるようです。 |
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1KB,1MB,1GB10の3乗と2の10乗は、 1000と1024 と近い数値なので、 コンピュータ系のメモリなどのサイズを表現するのに、 SI単位表記のK(キロ) やM(メガ)、 G(ギガ) などの単位で表現されることはご存知かと思います。 一方、 同様にコンピュータのパーツのハードディスクは、 単位系に等しく、 1MBは1,000,000バイトで扱われます。 ところが、 Windowsや AppleのOSでは 2進数表記で扱うためOSのサイズとハードディスクのスペック・サイズが 異なっているように見えます。 |
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サイズが少ない訴訟の容量違いは10進数表記の HDD150GB がOS上では2進数計算になり 140GB と少ないというものです。 まあ、わからなくて訴訟しているのではなく、 金銭目当ての訴訟だと思いますが、 陪審員制度のアメリカの訴訟なので、 このような単純に見える問題も ややこしいことになる場合もあるかもしれません。 この件は、コンピュータメーカー数社に対して 「誇大広告」として訴訟していますが、 単位系列を正しく表記しているHDD容量が悪いのか、 類似した表現をしながらサイズが異なる単位をしている慣行がいけないのか という点で言えば、 紛らわしい単位慣行を一般に対して提示していることの方が いけないのではないかと思いますが、 訴訟で金銭を取るのに都合が良いストーリーとして コンピュータメーカー側を相手にする必要があるのだろうと思います。 |
半導体とコンピュータOSのSI単位系使用が 一般に混乱を招く可能性はずっと過去から認識されていた問題で、 Mi,Ki,Giなど別表現の提案なども策定させていますが、 慣習として1024 = 1K、1024K = 1MBという表現が継続されています。 キリの良い数字2進数のキリの良い数字は、至るところで現れ、 家電などのスペックでも、 最大8、16、32、64、128、256、512、1024... 32768 などの数字が現れます。 1024と表現せずに約1000以上、 500以上などの表現をされる場合もありますが、 正確な仕様表記も必要なため、 あまり使われることは多くはないようです。 このような数値には、 ある程度なれますから、 250や500というスペックの数字をみると正確には、 256、512ではないかという勝手な推測をすることすらある始末です。 |
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キリの良い感覚キリの良い数字は、対象や環境によって変化しますから、 あまり普遍な存在ではありません。 例えば、 128個を 約100個 とする方がキリの良い数字なのでイメージしやすいかというと、 12進、60進数系列が多く用いられる分野では、 約10ダース(120) のように表現する方がわかりやすいかもしれせん。 また、 7セグメントのLEDやLCD表示機が主流の機器のスペックでは、 表示桁から決定される 最大99、999などの数字も多く存在しています。 以前、担当した機器の仕様を決定する時に、 新モデルでは表示器の制約がなくなり、 従来機種では±99としていた数値を±100としたことがあります。 この時、ある技術者から「数字が気持ち悪い」といわれた経験がありますが、 これも人による慣行によるキリの良い数字として 機器の仕様が100より99の方が キリが良いと感じていたということだと思います。 99を100に変更すると、 開発している時に良く目にする内部表現の16進数が 63Hから64Hになって、 感覚的に少しだけやりにくいと感じた局面もありました。 16進数の63H(10進数の99)が、 キリの良い特別な数値として強く認識しているため、 64Hになると、同様に感じないため、 数字が並んでいる場面などでしばらく感覚的に 様子をつかむことがしにくくなったためでした。 |
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HDDの利用可能領域コンピュータのHDDの容量と一般の感覚に関して言えば、 個々のファイルの表記上のファイルサイズと 実際に使われている物理的なファイルサイズが異なりますし、 10進数と16進数の違いからくるサイズ違いの他に、 フォーマットすることで利用できる残りサイズが減少します。 さらに、システムファイルなどが非表示になっていれば、 その使用済みサイズも謎の使用済み領域になりますし、 仮想メモリのためのスワップ領域などもありますので、 何も知識を必要としていない人にとってのHDDの利用可能領域は 理解しがたい状態になっているかもしれません。 「天使の分け前」 があるからと納得しましょうという冗談もあるようですが、 几帳面な方には耐えがたい状態かもしれません。 |
Angels' share (天使の分け前)「天使の分け前」 とは酒類を樽で熟成中しているうちに「蒸発」して 内容量が少なくなることを酒造職人たちが呼んだものだそうです。 1年で2〜3%程度蒸発するとのことですから、 12年ものなど25%から30%以上も 蒸発してしまった状態から作られていることになります。 HDD容量もクラスタ サイズによって、 コンピュータを利用してファイル数が増えるに従って、 表向きのファイル・サイズ合計以上になくなって行きます (クラスタの未使用容量のために)。 「天使の分け前」 のようだといえなくないかも知れません。 (小さいファイルを多数作ると分け前の方が多くなりますが...) |
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これを機会に コンピュータのサイズ単位系の表現などが変更されたり、 注意表記が強化されるのかもしれませんが... このような表記が一般に対して問題であるとされ、 Mi,Ki,Giが策定されてからも既に5年ほどになります。 訴訟の行方はともかく、 多くの関係者の方が 改めて考える機会となっていることは確かですね。 |
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それでは、 次回もよろしくお付き合いください。 (^^)
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音と音響の四方山 ■ 時報がなくなる...ディレイ |
このコーナーは 音や音響についてのコラムをお届けしています。 あまり指向を決めているわけではありませんので 雑多な感じになりますが、 お付き合いいただければ幸いです。 | ||
地上波デジタルTVでは、 NHKのアナログ時計アニメーションの時報がなくなるそうです。 朝日新聞社のasahi.comの記事によると、 放送信号送出から家庭のテレビ画面に表示されるまで (デコーダーがアニメーション画像復号) 最大で約4秒のディレイが発生するため、 デジタル放送では別の画面にするようです。 ▼asahi.com 特集「地上波デジタル」のページ |
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放送のディレイ放送のディレイは、 現在でも発生していますし、 物理的にも電波の飛ぶ速度がある以上ゼロにはできません。 実際に、同じ対象が生中継されている場合には、 ラジオ、テレビ、衛星放送など放送の経路によって受信した音声など、 わずかに時間差があることに気づく場合があります。 これは、放送の経路 (中継局や衛生など) による遅延による部分もありますが、 放送局での音声と映像の同期のために 放送時にディレイを掛けて調整した結果生じている 遅延も含まれていますので、 今回のディレイと同じというわけではありません。 中継などの場合に、 信号経路が複数になり、 映像や音声の各チャンネルを ディレイで時間合わせをする必要が生じる場合があるからです。 現在のアナログの時刻放送については、 中継局や衛星などの各放送経路の遅延を見越して 先出しされているため正確な時刻となっているようですが (定時時刻放送のみ)。 デジタルの場合には、家庭のチューナー、 デコーダーの映像が表示されるまでの処理速度差があるため、 秒針が時刻を示しているように見える画面が変更されます。 |
時報のピッチ(音程)よく言われるように時報の「ピッ、ピッ、ピッ、ピーン」 (「ポッ、ポッ、ポッ、ポーン」だろうといわれたことがありますが、 とにかく時報の秒刻み音声です) という音は、440Hzと880Hzなのですが、 これはNHKの時報で、 ラジオ放送の「ピーン」という時報は1KHz(1000Hz)です。 440Hzは国際標準ピッチで音階のラの音となっていますが、 楽器の調律では、 現代は、少し高めの441から442Hzあたりに調律されることが多く、 オーケストラによって、楽器によって、 また、演奏者の好みで決められます。 オーケストラは、 オーボエが出した音を基準に他の楽器のチューニングを行いますが、 これは、他の管楽器に比較してもオーボエの調律が難しいために オーボエに合わせることにされています。 基準のラの音は、440Hzですがピアノの調律の場合、 以前にこのメールマガジンでも触れましたように 通常ストレッチ・チューニングという 上下が強調されたような調律をされることが多いので、 基準が440Hzであれば、 オクターブ上は、 880Hzよりわずかに高めにチューニングされています。 |
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アナログとは放送の画面を変更するとのことで、 廃止するとはなっていまでんので、 時刻放送自体は放送されるのだと思いますが、 ジャストタイムが判別できないような内容なると予想されます。 時報と時刻合わせ時放というと、 多数の時報の音を利用した時刻合わせ機能を持つ機器を思い出します。 もっとも身近なところでは ビデオやHDD/DVDレコーダーなどに 時報による自動時刻合わせ機能を 持っているものがあるかも知れません。 時計やプログラマブル・タイマー・コントローラーなどは、 現在は、GPS時刻や標準時刻電波(JJY) を利用するものが多いと思いますが、古いものですと、 FM,AM放送などの時刻放送で時刻を合わせるタイプのものもあります (電波時計として標準電波を受信する時計が 廉価に種類も豊富に販売されていますので 時計は標準電波受信が多数派でしょう)。 ビデオ、DVDレコーダーなどは、TV放送を利用するか、 衛星放送の時刻を用いて時刻合わせをしているかどちらかで、 別途、標準時刻電波を受信して 時刻合わせをすることはないだろうと思います。 時刻放送のディレイの問題のために 時計のアニメーション画面を廃止するのだとすると、 同じ理由で、音声もジャストタイムを放送することができないので、 時報音声を利用する時刻合わせ機能は 地上デジタル放送では機能しなくなると考えられます。 おそらく、地上デジタル放送の場合には、 時刻情報を直接利用した時刻合わせ機能になるのだと思います。 この場合でも、電波と中継経路のズレは生じますが、 デコード時間によるズレは無関係なので、 4秒より小さな誤差で動作するようにはなります。 まだ、 いろいろと地上デジタル放送の特有の事象が出てきそうですが、 8月の試験放送も終わり、 もうすぐ一部地域で本放送開始になります。 |
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それでは次回もよろしくお付き合いください。 (^^)
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編集後記先月、HotWired 発のYahoo!Janpanのニュース記事に 「匂いの注入」で米軍の戦闘糧食は改善されるか http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030828-00000004-wir-sci (すみません。 8/28日の記事なので、もうすぐ削除されると思います) 『嗅覚によって 戦地糧食に対する兵士の受容を増進する 能動的パッケージ』 という米陸軍の糧食の風味の影響の研究の記事がありました。 人間の感覚や活動への影響については興味があるので、 たまたま記事を読んだのですが、 記事の内容そのものもさることながら、 海外記事らしい冒頭の 「米軍の糧食は相変わらず、 車に轢かれて死んだ動物のような味がするかもしれない...」 という書き出しが非常に印象に残りました。 まあ、人間は、ほとんどの場合、 動物たんぱく源としては死んだ動物と魚などを食べているわけで、 生きたまま食するのは、まれですが... 風味や味覚の良くない食品のことを「 車に轢かれて... 」とまでイメージ悪く言わなくても良いのではないかという気もします (車に轢かれた動物の味は普通とは 一味違うのでしょうか。 しかも、「相変わらず」ということなので、今はそうなんですね。 よほど、ひどい風味なのでしょうね。) 。 ちなみに、 記事の研究所ではありませんが、 米国の陸軍関係ラボ U.S. Army Research Insutitute も略称はARIです。 http://www-ari.army.mil/ (アクセスすると警告ポップアップが表示されますが、 軍関係なので掲載内容にたする「わかっとるだろうが...」のような物です。 見る分には特に問題ありません) ホームページには、 "about ARI"、 "ARI Mission" など同ラボの紹介や成果、リリースなどが掲載されています。 記事は、米陸軍ネーティック兵士センター というところなので、このARIではないですが同じ米国防関係です。 それでは、 次回、2003年10月号もよろしくお願いいたします。
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