【Vol.9】2003年4月号

「ARIアメニティ&サウンド マンスリー」は、 毎月 第4金曜日にお届けしています。 みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、 今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。

■□ CONTENSVOL.102003.4.25  □□□□□□■□■□■

1 .技術・開発コラム

事故とユーザビリティとバグ

2 .音と音響の四方山

アナログレコードの光学読み取り

コラム 今回は本文の少しだけ行間隔を取るようにしてみました (少し長いですね。すみません)

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技術・開発コラム  事故とユーザビリティとバグ

技術・開発コラム このコーナーは、 ディジタル機器の開発やソフトウェア開発にかかわることなど、 技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で お届けできればと考えています。

近年、沿岸の浅瀬などでの座礁海難事故のニュースを よく耳にするような気がしていましたが、 国土交通省 高等海難審判庁の発表によると、 「 GPSでは表示できない浅瀬に座礁する事故などが多発 」とのことで、 やはり、浅瀬での座礁事故は多いようです。

高等海難審判庁 : 「GPSと海難」について

GPS(衛星利用測位システム)と海難

掲載されている 「GPSと海難について」 を見ると原因には、 次のようなGPSと海難事故原因との相関が挙げられています。

  • BUG GPS

    GPSとは、Global Positioning Systemの略称で、 米国によって1973年に開発された地球を周回する 24個人工衛星からの位置測定用の電波をした受信者が地球上の緯度、 経度を決定するシステムです。

    米国の国防総省によって管理されている人工衛星の情報を 民間利用に解法されており、 ご存知の自動車の地図システムや 携帯型の位置測定システムなどで利用されています。

    2000年5月2日までは、 軍事上の観点から位置精度が意図的に100m程度に押えられていました。

    今回のイラク戦争で、 GPSの精度が悪くなるかもしれないという説が言われたのも、 イラク側が利用する民間のGPSの精度を落とすために 米国が精度を再度制限するかもしれないという理由です。

    ライカジオシステムズの 「GPSシリーズQ&A」のページには、 GPSの仕組みについて簡潔で丁寧に説明されています。

    GPSの性能の理解不十分
  • GPS機器の取扱いの理解不十分
  • GPSの調整等に気を取られた
  • GPSのデータ入力等の設定に気を取られた
  • GPSプロッター画面の表示切替えの不適切
  • GPSへのデータ誤入力
  • GPSデータを海図に誤記載
  • GPSの注視に気をとられた

一言で言えば、GPSの過信と過失につきますが、 GPSの表示に対する過信については、ともかく、 「気を取られた」「データ誤入力」「理解不十分」などの過失にについては、 機器の開発技術者も考えるべき点があるかもしれません。

「気を取られた」のは、 最終的にはユーザーの責任ではありますが、もしかすると、 注視すべき表示を見やすく工夫するなどユーザビリティによって、 軽減できる内容であったかも知れないからです (今回の発表された事故が GPS航行機器の問題だと言う意図ではありません)

ユーザビリティ

このようなユーザビリティの観点は、 全ての機器やソフトウェアなどを設計、 デザインする場合に当てはまります。

利用者に 「高度な技術的理解が必要」であったり、 「利用に注意が必要」な内容は、 避けられない性質の場合もありますが、 設計やデザインなどによって 回避可能である場合があります。

デザインや仕様が、 人間の誤操作や誤入力を誘発するような 設計になっている場合もあります。

技術・開発コラム ごく稀にしか操作する必要がないボタンを 余り適切ではないタイミングでLED点滅などさせれば、 ユーザービリティ・テストをしなくても、 何%かの人は、 そのボタンを反射的に押すことになるだろうことは 容易に想像できます。

このように書くと、 そのような馬鹿げたデザインはしないと一笑に付されそうですが、 実際には、まじめに検討され、設計された機器であっても、 多機能でありながら操作系が少ない機器の場合には、 類似したようなユーザビリティに陥っている機器もあると思います。

バグ

海難事故については、バグや、 機器の誤動作などについての可能性は全く記載されていませんし、 GPS機器では問題が発生していないのだと思いますが、 情報化された現在の機器、ソフトウェアが関わる事故には、 バグによる機器の誤動作の可能性を考えないわけには行かなくなっています。

BUG バグ(BUG)

主にソフトウェアの不具合を表す、 バグ(BUG)の意味は、 英語の意味通り虫です。

コンピュータ聡明期に大型汎用機が誤動作して原因を調べた所、 汎用機の中(紙テープの中だったかもしれません ) に本当の虫(リアルワールドのバグです )が発見されたそうです。

不具合の原因はバグ(虫)だ」 ということになり、 コンピュータやソフトウェアの不具合を バグと呼ぶようになったとのことです。

(原典を忘れてしまいましたので、正確ではないかもしれません。 もし、軽く聞き流せないとおっしゃる方は、調査してみてください。 有名な逸話なのですが、 信頼できる情報を調べるのは少し難しいかもしれません)

さきほどのボタンの例のような場合は、 ソフトウェアもハードウェアも正常動作していますが、 仕様設計上、デザイン上のバグともいえます。

人の安全に関わる領域に既に十分、 ソフトウェアが利用されていますし、 社会生活を支える基幹システムも、 ソフトウェア、コンピュータが利用さえれているため 発生する問題は、 2000年問題の時の騒動でご存知の通りです。

2000年問題は、 日時を扱う部分についての設計上、 実装上の問題、バグでした。

2000年を超えて利用されることは想定、 予定されていなかった古い機械などもあるのですが、 設計者の想像力の欠如とも考えられます。

BUG ユーザービリティの設計バグの場合も、 設計者の想像力の欠如によって生まれている場合もありますから、 高機能な機器やパソコンのソフトウェアのような複雑さを持つ物の 開発に携わる技術者は、 より広いユーザーに対する理解力と想像力が必要とされます。

BUGソフトウェアで不具合が見つかると 「バグ(虫)がいた」 などと表現されますが、なんだか、 虫のせいで誤動作しているようで、 不具合の深刻さと責任をいいかげんに扱っているような感じもします (^^;

 

コラム BUG 余談ですが、 ARIの入っているテナントビルのエレベータバグありです。 ちゃんと2000年も システム交換でクリアして毎日稼動していますが... 音声案内が無関係なタイミングで 「しばらくお待ちください」といったり (到着までしばらくかかるのは認めますが)「重量オーバーです」 といったりします (1人で乗っていて扉も閉まり動いている最中なので...)。

BUG 他にもいくつか バリエーションがありますが、 今まで聞いたことがあるものは、 間違った音声案内だとはっきり認識できるタイミングと 内容で鳴るので罪が軽いといえば罪が軽いのですが...

BUG また、これは、 バグではなくメンテナンスの問題かも知れませんが、 エレベーターホールに設置されている飲料水の自動販売機は、 時々、 投入コインを取って知らん顔をしたり (当然、つり銭返却レバーも機能しません。 しかっりキープしてます)、 ボタンを押しても 「コトッ」 と音だけして物が出てこないことがあります。

今までに、500円硬貨や千円札などを 自販機がスチール成功 したことは何回もあります (800円の釣りを50円と10円硬貨で返却するなど CSが低い機械ですが... 利益率が良くて販売店とオーナーのCSは高いかもしれません)  (TT)

BUG 同じ販売店の自販機が別の場所にも設置されていて、 そこには「新500円硬貨使えます」 と書かれていますが、 投入口は500円の大きさは投入できないように ガードされたままです。 これは記載がバグありです。 設置場所テナントのゲームセンターは 「この機械は当遊技場の管理ではありません」 と貼り紙しています。

このように 問題がある機器に日々接していると、 反面教師にして心がけるには良いかもしれません  (TT)

それでは、次回もよろしくお付き合いください。 (^^)

ARI PR ARIは、デジタル機器の ハードウェア開発、ファームウェア開発、音響システム開発 などをお手伝いしています。

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音と音響の四方山  アナログレコードの光学読み取り

音と音響の四方山 このコーナーは 音や音響についてのコラムをお届けしています。 あまり指向を決めているわけではありませんので、 雑多な感じになりますが、 お付き合いいただければ幸いです。

ブルーレイディスクの登場となっても、 さらにDVD以降にも継続されそうな 新たな規格グループの設立など 大容量の光ディスクメディアの将来的は、 やはり、混沌とした状態のようです。 少し前になりますが、スキャナで、 アナログレコードをスキャンした画像を コンピュータで音にしたというものが記事で 紹介されていました。

アナログレコードの光学読み取り

コラム アナログレコード

ご存知の通り、 アナログレコードは、 塩化ビニールの円盤に音楽因業に併せた溝を作って記録し (カッティング)、 再生は、 レコードプレーヤーの針で溝をなぞることで信号を再生します。

針のトレースでダイナミックレンジのある音響信号 (ステレオ) を再生するため、 大きな信号をそのまま記録できません。

記録時には、低域をイコライザで下げて、 再生時には低域をブーストして元の信号に戻す RIAA補正 という周波数特性の補正で録音、再生されています。

プリアンプのPhone端子は アナログレコード専用に RIAA補正回路を通るようになっています。

※RIAA( Recording Industry Association of America)
米国レコード工業会

話題に取り上げられているのは、 スキャナを光学読み取りに利用した点だけで、 コンピュータ処理した後の音は、 何が音源なのか判らない程度の音ということですので、 極論すると画像ファイルから適当に 音を作ったというのに等しいのですが、 スキャナを使おうと発想して実際に実行してしまった 大胆さが評価されてのことでしょう。

HOT WIRED JAPAN  2003年2月25日
スキャナーで記録したアナログレコードの画像から、 音を再生するソフト

参照先の本文中にもリンクが紹介されいますが、 エルプというメーカーが レーザー光線でアナログレコードの溝をトラッキングして 信号を再生する 「針のいらない夢のレコードプレーヤー The Laser Turntable」 という非接触型のレコードプレーヤーを以前から販売しています。

エルプの説明を見ると、 ステレオ記録の左右のV字を正しくトレースするために 5本のレーザーを使っていると記載されています。

スキャナは真上からの画像で、 しかも、記録密度に比較すると、 大抵のものは解像度が低いでしょうし、 信号の振幅に比較してコントラストが不足しています (24bitでスキャンしたとして、 最大から最小までのダイナミックレンジを フルに利用したとしても 輝度として利用できるのは、 CDなどの分解能16bitには届かないでしょう)

アナログメディアの性質と音楽

アナログレコードは、 右の断面図のようにV字の溝の左右に ステレオ信号を記録しています。

このため、左だけ、 右だけに完全なチャンネルセパレーションで 大きな信号を記録することは不可能です。

例えば、 バス・ドラムを右一杯にパンした マスターテープをカッティングするのは、 不可能か、かなり困難な音楽ソースといえます。 音楽的な理由が大きいですが、実際に、 アナログレコード時代には、 振幅が大きいバス・ドラムの音は、 センター定位させるのが録音メディアとしての常識でした。

CD普及期にバス・ドラムの定位がパンポットで 左右に飛び回っていたり (有名な人では、 ポールマッカートニーだったと記憶しています)、 オートパンで、 左右に移動するドラム音というミックスが出回りましたが、 これは、CDだからこそできる記録方法だから 面白かったのだろうと推測します。

アナログ イメージ 針がトラッキングするため、 ピーキーで鋭い波形の信号もあまり使われませんでした (これも、 マイケルジャクソンのBADという曲で 非常に鋭いクリック音が使われています。 耳にやさしくない音なので ヘッドホンで聴くのはオススメできません)。 よく言われたように、 騒音の中にかすかに聞こえる虫の鳴き声は、 アナログレコードで記録することは困難な音源ソースでしたが、 デジタルでは問題にはなりません。

マルチチャンネルへ

現在は、ホーム・シアター・システム DVD (とDVD-Audio)、 SACDなどの マルチチャンネル のオーディオソースの音源も、 機器もコンシューマーレベルで普及期にいますので、 実は、コンシューマーの マルチチャンネルは、完全ディスクリート (独立)な5.1chだったり、7.1chのシステムですから、 劇場のサラウンドより、こと、 チャンネルの独立性ということに関しては、 上の場合もありえる贅沢な代物です。

映画のサラウンドでのマルチチャンネルの場合、 各劇場での再生状態を考慮したり、 劇場の残響を想定して制作された音源ですから、 今のコンシューマーのマルチ・チャンネル音源を想定したものでは ないはずです (リマスタリングはあるでしょうが)

マルチチャンネル がある程度以上普及したと考えられたら、 極めて一般的なコマーシャルな音楽などでも、 コンシューマーのマルチチャンネル再生を前提とした、 音源が多くなるかもしれません。

ただし、 セッティングや音場が好ましく設定されているかという点と、 ステレオ再生との関係は、制作側の方にとって、 さらに悩ましい問題となるのでしょうが...

それでは次回もよろしくお付き合いください。 (^^)

ARI PR ARIは、 音響設計 音響測定、 音響調整など 音響関連サービス の業務や、 デジタル機器の開発 プロ用音響機器 の販売を行なっています。
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■□ 編集後記 □■

本当は、 アナログレコードと再販制度、 絶版について書こうかと考えていたのですが、 今回はメディアについてにしました。

AVアンプなどでは、 スピーカの距離などから リスニング・セッティングできるようになっていますが、 AVマニアの方ではない一般的な方で、 廉価なホームシアターセットなどを購入された方は、 どのようにセッティングされているものなのか 興味があるところです。

それでは、次回、2003年5月号もよろしくお願いいたします。

ご意見、ご感想、技術関連のご投稿など歓迎いたしますので、 なんでもお気軽にお寄せください。
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