【Vol.8】2003年2月号

「ARIアメニティ&サウンド マンスリー」は、 毎月 第4金曜日にお届けしています。 みなさまにお楽しみいただけますよう努力する所存ですので、 今後とも末永くお付き合いいただけますようお願い申し上げます。

■□ CONTENSVOL.82003.2.28  □□□□□□■□■□■

1.技術・開発コラム

sin,cosの学習(後編)

2.音と音響の四方山

デジタルなプロの道具(後編)

コラム 今回は2編とも先月の続きで後編です。
連続物でスミマセン。

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技術・開発コラム  sin,cos の学習 (後編)

技術・開発コラム このコーナーは、 ディジタル機器の開発やソフトウェア開発にかかわることなど、 技術・開発に関するコラムをARIならではの観点で お届けできればと考えています。

テレビの高校数学講座を見たことをきっかけとして、 「実用と数学」のような内容について前回、 今回の2回に分けて綴ってみました。 ご異論もございましょうが寛容にお付き合いいただければ幸いです。

   前回の内容は バックナンバーをご覧ください。

学習の段階

三角関数が生まれるまでの経緯では、 円の弦の角度や長さの関係の法則を証明しよう というようなところが最初の起りのようです。

いろいろと、円や半径や角度について思考した結果、 円周上点から弦に垂線を下ろした直角三角形として考えると便利である という発見がなされ、三角関数に至ったようです (スミマセン。正確に調べていません)。 本当は、学習も、 類似した経過をたどって学習した方が良いように思います。

実際の授業などでは、 三角形の角度や辺の長さの初期段階を一通り終わったところで、 定理やその証明を暗記するように、次々と進めた後、 おもむろに、 正規化した場合の円との関係やsinのグラフが登場します (教科書によって異なるかもしれません)

正規化に至った円周が本来の人類の最初の出発地点ですから、 ここに至って原典、本題に入ったということではありますが... 三角関数は正規化された形での正しい理解がなければ体系的には 理解できないことを考えると、 個人的には学習ルートが良くないように感じています。

ベクトルも微積分も同様の手法がとられています。

例えば、微分は漸近線や導関数のトレーニングをこなした後、 おもむろに微分が登場するという具合ですし、 ベクトルも実数的な図形上にいきなりベクトル というものを定義して座標や、 面積などを計算した後、内積や外積、 そして 単位ベクトルのようなベクトルの性質がより一般化された形に... 具体的な実数世界から一般化、正規化された形に進みます。

深い理解

個人的な体験を振り返ると、 定義や定理をとにかく記憶するように教える という手法の授業を受けて今したので、 高校生の時には、 良く理解しているというより 解法テクニックを良く記憶しているという感じでした。

それこそ、突然、半径=1(斜辺=1) になったのは何故だろうという授業の進み方でした。 円周に視点が切り替わったときも、 「円周で考えると...」 程度の導入でさっさとテクニカルな部分に進みます。

数学の考え方などを学ぶという本質において、 最も大切なのは、定義や定理が仮定されたり、 発見される部分だと思うのですが、この部分は大抵の場合、 定理の証明部分に含まれ、 数式などで証明をして終わりになっていることが多く、 さらに、その証明の1番肝心なある「仮定」 をするとというような部分では、 「とにかく証明するのに都合が良いのでこのように仮定する」 というのに近い教え方だったように記憶しています。

考えるトレーニング

ソフトウェアのプログラミングやデバッグでは、 要求や事象をモデル化、仮定して設計したり、 推論する能力が重要になります。

簡単に例で、

 ・「 Aの場合にはB

 ・「 Cの場合にはB

 ・「 Dの場合には、Eの時を除いてB

などという要求があったとします。

これは、 全て結果は「B」 「DかつEは除外」 ということを言っているだけの簡単なものです。 さらに、 A,C,D以外の入力条件の時が未定義 であり、確かめる必要があります。

数学の定理の発見や証明のような難しい問題ではなく、 簡単なことですが、実際のソフトウェアの設計などで、 少し複雑になると、整理できない人が結構いることに気付きます (プログラムコードに最初の要件 そのままコーディングされているんですね)。 できない人だとどうなるかというと、 BやEが入力された時に結果が不定な処理が出来上がって来ます。

これは、先天的なものというより、 考えためのトレーニングがなされていないためではないか と感じています。 数学や物理の学習において、 テクニックを知識として与えるため、 考え方や考えるトレーニングがされていないのではないか...

テクニックを忘れてしまえば、 大学生になっても台形の面積が計算できなかったり、 分数があつかえなかったりするのも 同じあたりに原因があるのではないかとういう気がします (台形の面積のあたりは小学生レベルですから、 割と時間を掛けて考え方を教えているような気もしますが...)

分数は、記号や性質のルールであるため、 本当に忘れてしまえば仕方が無い部分もあるのかもしれませんが、 台形の面積は、 「知っている」か 「忘れた」 かという次元の問題とは違います。

テクニックと知識に強い教育で育ってきているため、 エンジニア(技術者)ではなく テクニシャン だとといわれるような技術職が多くなるのかもしれません。

今回は、なんだか教育論のようにもなってしまいましたが...  (^^;

ARI PR ARIは、デジタル機器の ハードウェア開発、ファームウェア開発、音響システム開発 などをお手伝いしています。

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音と音響の四方山  デジタルとプロの道具 (後編)

音と音響の四方山 このコーナーは 音や音響についてのコラムをお届けしています。 あまり指向を決めているわけではありませんので、 雑多な感じになりますが、 お付き合いいただければ幸いです。

「それでも銀鉛写真はなくならない」 というデジタルカメラに関するアンケートでの、 「プロの現場では...」という部分が、 大変、過去のオーディオやDTPなど他の分野のの図式と 類似していると感じたことを前回は述べました。

今回は、 「プロの現場では...」、 プロの道具だと何故かという部分について進めてみたいと思います。

プロ音響の道具を説明しようとしているわけではありません。

特殊な音響機材の話などを期待されている アマチュアの方がいらっしゃいましたら、 ご期待の内容と異なり申し訳ありません。

前回の内容は バックナンバーをご覧ください。

プロの現場では

どの分野であっても 「プロの現場」というのは、 日々の仕事で利用できなければいけませんから、 アマチュアより現状に対して非常に保守的な傾向があります。

コラム 使い勝手
プロのいう使い勝手、使いやすい道具の中には、 一般的な操作方法以外に 「目的の結果を得るための」 使い勝手という部分が多分に含まれます。

以前にモニターでも少し類似したことを書きましたが、 「目的の結果」 に対して確実であれば、 たとえ操作感や特性などが優れていなくても、 便利な道具ということになります。

これは単なるスピーカイメージです モニターなどの音の確認のような部分の特性に癖があっても、 期待したことと結果が予想通りであれば、 便利な道具となります。

応用的な利用方法があるアクセサリや小道具も、 応用の仕方が確立できている道具が便利で、 工夫次第で無限の可能性を秘めた新製品は、 便利な道具には数えられないこともあります。

新規に機材、 道具を導入することに対して期待通りの成果が出せなかったり、 現在利用している機材より劣る部分が存在している かもしれないリスクは、 日常の仕事を継続して行く上で 大変大きいものにみられ勝ちです。

新しい道具を自身が使いこなせるように 理解したりマスターする必要もあります。

そのためか、新しい機材が登場した時に、 プロにアンケートを取ると、 保守的な意見が多く聞かれる傾向があるように思います。

仮に優れた機材であったとしても、 使い方や特性が異なる物に対する反応は、 アマチュアにはそれほど大きい抵抗が生じないことが多く、 むしろ 新しいものに対する興味や期待が強いのですが、 プロの場合には往々にして拒絶反応が生じます。

金銭を稼ぐ道具なので、 良いものであれば、 便利であれば使われされそうですが....

趣味ではないので 採算性は重要です。 現在の機材をローンを組んで購入しているプロだって沢山います。 現在の機材が償却する前に新しい機材にリプレースするのは 商業的にうまくありません。できれば、 新しい機材を避けたいと考える人も沢山います。

プロの現場で多く利用されている機材が 信頼性など優れたもの であることは確かですが、 技術的な進歩が激しい分野では、 最も優れた道具が1番利用されているとは限らず、 1世代以上前の機材が主流であることは、 名機であるからばかりではないでしょう。

信頼性が...」 「使い勝手が...」 「現在のもので十分...」 「技術でカバーできる」 と理由があるのですが、面倒や支出を避けたい、 道具を変えることによるストレスや不安を避けたい という部分も多分にあります。 機材を代えて使えなかった場合、 明日から仕事ができません から慎重にならざる得ません。

このようにしてプロ御用達、 アマチュアあこがれの名機が 長期にわたって利用されている場合がありますから、 「プロの現場では...」は、 プロが利用する道具が本当に優れている という意味とは限りません。

デジタルの特性

デジタルの特性は、再現性が優れていること、 半導体技術や情報処理技術など工業技術を生かしやすいこと、 正確に記録しやすいこと (再現性と一緒ですが)という特性があります。 多くの分野において、境界精度までは、 アナログよりデジタルで高精度にする技術の方が容易であるため、 一般にデジテルの方が再現性や精度が優れている という結果になります。

デジタルカメラに戻ると 「銀鉛写真はなくならない」は、 方式による本質的な問題を考慮されたものではありません。

アナログの銀鉛方式と同程度の撮影、印刷が、 現在のデジタルカメラではできないだけで、 光学的な特性や印画まで含めて 銀鉛写真に求められる性能がデジタルで おおむね可能になれば、 デジタルの性能限界を超えた微細な部分でのみ アナログが勝ることになるのは明白です。 現像など再現性が容易ではない部分が マイナス要素とされる可能性が高いでしょう。

アナログ イメージ まだ、デジタルの記録精度や光学的な特性も 銀鉛写真で実現されているレベルに至っていませんが、 オーディオのように、アナログでは (程度によりますが) 困難なレベルにまでデジタルの性能が向上した時... コンシューマーや多くの商業写真プロどちらにとっても、 デジタル方式が適しているということになって行くことは 他と比較しても容易に予想ができます。

普及そして...

普及率が伸びれば、 多くのカメラ店で銀鉛写真カメラの取扱いが減少するでしょうし、 さらに進めば、 フィルムすらメーカーから取り寄せなければ入手できない というような状況になります。

そして... プロの現場でも多数がデジタルカメラが占めるようになり、 アマチュア写真家あこがれの プロ御用達デジタルカメラの名機が生まれます (今でも高級機にあることはありますが、 技術が成熟していないので割と短期間で 「かつての」となるでしょう)

あまり、音と関係しなかったですね。 (^^;  次回は、鋭意努力しますので、 次回もよろしくお付き合いください。 (^^)

ARI PR ARIは、 音響設計 音響測定、 音響調整など 音響関連サービス の業務や、 デジタル機器の開発 プロ用音響機器 の販売を行なっています。
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■□ 編集後記 □■

今回は、2編とも連続した上に、 あまり主題と密接な感じではなくなってしまいました。 次回は、また、方向性をもとにもどしたいと考えています。

 

パイオニアがついに連絡を絶ったそうですね。 ボイジャーはまだ生きていて、 もっと遠くを飛んでいるようなので、 あらためてボイジャープロジェクトの凄さと 幸運を感じずにはいられません。

ボイジャーは当初、 火星を探索した後のことは あまり考えられていなかったようですが、 ご存知のように太陽系をめぐって 太陽系の最後で反転写真まで転送させていました。

ボイジャーのプログラムは、 非常に記憶容量が少なく、 1つの惑星に向かう航路をプログラムするのがせいぜいで、 1つの航路を終えると、 電波で次のプログラムに書き換えて 次々と探査を成功させていったということです (書き換え中は制御不能でしょうし、 少し間違えても簡単に修正はできませんから大勝負ですね)

外惑星に行くに従ってどんどん加速的になって行き、 姿勢制御を安全、 確実に行なえる可能性が非常に低くなるそうなので、 脅威的な成功プロジェクトですね。

 

それでは、次回、2003年2月号もよろしくお願いいたします。 (^^)

ご意見、ご感想、技術関連のご投稿など歓迎いたしますので、 なんでもお気軽にお寄せください。
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